ネタになるような出来事に出会えばブログ更新へのモチベーションは否が応でも上がります。その出来事の熱が下がる前に文字達を呼び集め文章にまとめ上げる。

 しかしながら、普通に生きて過ごす毎日は平々凡々と過ぎて行くわけで、起床時に起き、食事で空腹を満たし、仕事をこなし、自由時間に好きな事を楽しみ、就寝時間を少し過ぎてしまった段階で布団に収まるといった変わり映えの無い物。そんな何でも無い日常は有難い事だけれども、取り立てて書く事も無くそっと筆は置かれたまま。

 そんなごく普通の何か申し上げる出来事もネタもない中において、文章を綴れば如何様な物が出現するのか実験的観点で認める第十六回。


  季節の変わり目、頭上では薄く黄色がかった白とは言い難い暗い色をした空が一定の重たさを保ちながら広がっている。暑い夏が日増しに遠ざかって行き、すっきりとはしないのだが過ごしやすい陽気が増えている。

 席の隣の人との間隔が気になる程に混み入った電車はガタンゴトンと自分を家へと向けて運んでいる。もう何年も通った道のり、ホテル街を抜け、川を渡り、高層マンションがゆっくりと右へ右へと流れて行く。揺れる吊革をぼんやりと眺めていると催眠術にかかるのか、気がついたらすでに降りる駅に到着している、気分的にはあっという間だった。


 駅を降りると傘を手に持つ人と次々にすれ違う、外に出ると大きい粒だがゆっくりぽつぽつと顔に落ちて来る。今日は日課のランニング実施日、今月も残すところあと僅かで目標の距離に到達していない状況に、帽子眼鏡を仕舞い込み背負ったバックパックを身体に固定してトコトコと走る。いつでも走れるように最近はどんな時でもランニングシューズは手放せなくなっている。

 ニットで編まれたランニングシューズ、大きな穴が2箇所、靴を履く動作で擦り切れたのか、踝辺りの肌を露見させた恥ずかしい仕様となってしまっている。

 コンビニ、カラオケ屋、カーディーラー、和菓子屋、弁当屋と順番にパスしながら顔の水滴を拭い脚を進める。雨は強くなったり弱くなったりと、いる場所によって変化するが止む気配はない、あまり遠くまでは走れそうになかった。

 汗なのか雨なのか、両方なんだけれども、身体に纏わりつく水分量が多くなって来た頃、いつもの数キロ手前で折り返した。

 会社の給湯室の浄水器で汲んだ水をごくりと飲み込み家に向かってゆっくりトコトコとまた走る。


 家に帰るなり、濡れた衣類を洗濯機に放り込みそのままシャワーを浴びる。まだ湯船に浸かるには早い気がする9月の終わり、お風呂が沸きましたの声をしばらく聞いていない。

 着替えを済ませたら少し早めの昼食。昼食といっても夜勤従事者の自分にとってはこれが夕食のような物。炊けたご飯を茶碗に積めて、スープを火にかけメンチカツをトースターで温める。

 ブレーカーが落ちないように使える電化製品は一つずつ、温める系だけの食事の時は細心の注意が必要不可欠。


 料理はいつだって苦手だ。中がピンク色をした真っ黒なハンバーグを焼く自信だけはいつもそこにあって、上手に出来た野菜炒めもどこか美味しく無い様に感じてしまう。

 いつだったか忘れたけれど、新米だった事もあるが、びしゃびしゃで美味しくないご飯を炊いた時には自分に心底がっかりとした。食事は食べるのが専門に限ります。

 空腹を充すため急かすようにお腹に次々と昼食を放り込み、ささっと洗い物を済ませたら一日の終了が近い午後1時過ぎ。

 今日は文章を書くと決めたのでパソコンは付けずに布団に横たわりながら携帯をいじる。案の定睡魔が布団に潜り込んでくるので慌てて携帯を充電器に挿した。というところまでは覚えている。


 夜8時近く、何度も鳴るアラームに起こされて布団から飛び出してみる。干してある衣類を掴み着替えをするがズボンが無い。思案する中で目と鼻の先に履けずに出品予定だったフェノメノンのジーンズが横たわっている。恐る恐る脚を通すと異様な雰囲気に包まれ、止まるはずのないフロントホックが余裕を持ってあるべき姿でそこに収まっている。うわぁ履けたという声と衝撃でスタートする昼夜逆転の一日。

 こうしてまた日常は誰にも当たり前に訪れ、過ぎて行くのでありました。