事業に
とんとん拍子で順調に成功した人間に話を聞くか
辛酸舐めて泥水啜って苦労を続ける人間に話を聞くか
これから社会に出て行く人間にとって、どちらの方が有意義か。
成功した人間の中に、自分の事業が成功しただけで全ての事業に成功した気になる人が居る。
関与した事も無い仕事について、あたかも知っているかのように得意げに話す。
「自分の将来は既に決まっていて、その為の準備も万全で、この仕事の相性は抜群で、未来はもう約束されているようなものだ」
という人は、是非前者の話を聞くべきだ。後者の話など聞く必要は無い。
そんなに自信を持った人に、今苦汁の日々の話を聞かせても意味は無い。馬耳東風である。
何故なら、自分には関係ないと頭ごなしに決め付けるからだ。
だったら最初から、不自由や苦労も大して無く成功した人の話を聞き、自分の将来に更に希望を見出し、夢のように輝かしい未来に向かって歩めばいい。
あなたには、わざわざ苦労話を聞かせるまでもない。
苦労を続ける人間の中に、数々の挫折や苦悩を経験したようには思えぬ強い精神力を持った人が居る。
何でも否定的に捉えるくせに、中にあるメンタルは何にも折れない。
「自分の将来は未だに曖昧で、その為の準備も無く、どんな仕事との相性が良いのかもわからず、未来が見えない」
という人は、是非後者の話を聞くべきだ。前者の話など聞く必要は無い。
挫折、苦労、失敗談を聞き、余計に将来が心配になればいい。今のご時世、心配しすぎてもしすぎる事はない。
未来が不安なだけに、ネガティブな話はよく耳に入り、いつまでも頭に残る。
悩むだろう。苦しむだろう。心労はよりつらいものになるだろう。
しかしその分、いざ職に就いて四方八方から槍の雨が降り注いだ時、その不安や苦悩は不動の盾となって、あなたを守るだろう。
その日の為に今まであなたは悩み、苦しんできたのだ。
RPGに例えよう。
冒険フィールドに出てボスに挑んだ時、本当の強靱さを発揮するのは、冒頭に挙げた二種類の人間の後者だ。
ボスが前に立ちはだかる日までに、ボスに苦悩させられた村人たちの話に耳を傾け、己のステータスの不安から武器や防具、仲間を揃え、そこに辿り着くまでの小さい敵を細々と倒しながら徐々に底から心の強い勇者になり、大ボスに挑む。
しかし、悩み苦しまなかった人はどうだろう。
村人の話などに耳を貸さず、己のステータスを過信し武器も防具、仲間さえ揃えず、小さい敵でレベル上げをする事もせず、ただボスに向かって突っ走り、そのまま大ボスに殴り込む。
冒険フィールドは社会
ボスは障害物
ボスに苦悩する村人たちは失敗経験者
武器は苦悩
防具は不安
仲間は苦労を共にする友人
小さい敵は苦労
大ボスは人それぞれいつか訪れる大一番
一つだけRPGと違うところを挙げるとすれば、大ボスはこちらから臨むだけでなく、不意にあちらからやってくる可能性があるという事だ。
大ボスが向かってくる事を知ってから装備を揃えていては遅い。あっという間にゲームオーバーだ。
そこからニューゲームを出来る屈強な精神の持ち主ならいい。
しかし、装備を揃える暇無くして大ボスにこてんぱんに叩かれゲームを脱落するだけでなく、そのまま人生までも脱落してしまった著名人たちを、あなたもご存じではないだろうか。
全ての人が当てはまるとは言わない。
けれど、装備を揃え、経験値を地道に稼ぎ、これでもかというほどフィールドを歩き回るのは、決して無駄な事でも、恥ずかしい事でもない。
そうしていれば、思い掛けない宝箱を見付ける事だってあるはずだから。