経済政策

前回、世界の中で日本だけ20年も経済成長が出来なかった。それは政府の政策が誤っていたからという話になっていました。今回、葉可世さんは訪ねてきた二人に、従来の日本政府がとってきた経済政策について話をするようです。どんな話なのか聞いてみましょう。

 

葉)お早う、お二人さん。もう飽きてこないのではと思ったが、頑張ってきてくれたんだね。では早速、話を始めよう。

 

八・熊)お早うございます。経済の話は難しくて我々には関係のない話だと思っていましたが、どうも我々の財布に直接関係のある話のようで、聞かないわけにいかず又伺うことになりました。今日もできるだけ易しく話して下さい。お願いします。

 

葉)そうかい。そういってくれると嬉しいね。はなし甲斐があるよ。では始めるよ。大東亜戦争の敗戦から世界第二の経済大国になったバブルまで、政府のとった経済政策はその時々の状況にあった適切なものだったと思うね。1990年初めにバブルが崩壊、ここから日本の不幸が始まったんだよ。

 

熊)そう言えば、いろんなことがあったのを思い出しますね。朝鮮戦争、ニクソンショックとかオイルショックもありましたね。いろんな危機を乗り超えられたのは政策が良かったこともあるでしょうが、運が良かったとも言えるんでしょうかね。

 

葉)勿論運が良かったことは否定できないが、当時の政府の経済政策が適切だったことが一番決定的だったと思うよ。しかしバブルを境に状況は一変したね。バブルが崩壊し、時の海部政権は茫然としなすすべを知らぬといった状況だった記憶があるよ。次に最も経済に詳しいと評判だった宮沢喜一氏が政界・財界の期待を一身に集め総理に就任したんだよ。これで日本も立ち直るかと思ったが、これが全く期待外れだったね。

 

宮沢さんは大蔵省の官僚から政界入りした東大出の大秀才だったが、教科書に書いてないような事態に遭遇し、ただ狼狽えるばかりだったんだね。学校秀才の宮沢さんにとっては運の悪い状況で、ある面仕方がなかったのかもしれないね。

 

八)するていと、それまで教科書に書いてあった経済学が間違っていたってことなんですか?

 

葉)良いところに気が付いたね。これまでの世界の経済学は供給不足による物不足インフレには適切な手が打てたのだが、供給過剰、需要不足のデフレに対しては無関心だったようなのさ。現在の安倍政権も含め日本の歴代政権はこの古い経済学に基づき政策を立案実行してきたから20年も不況が続いたんだと思うよ。

 

八・熊)なんだか話が難しく良く分りませんが、要するに政策の元になる経済学が間違っているという事ですか。経済学者なんて偉そうにしていても間違うのかね。

 

葉)経済学に限らず学問というものは、世の中のいろいろな現象を研究し、どんな場合でもその現象を説明する普遍的な学説を立てることを目的としている。経済学では、どんな時代・場所、どんな体制の国においても現実の経済現象を説明できる普遍的な学説を学者は研究し発表するものなのさ。しかし一般の自然科学と違い経済学ではそのような普遍的な学説は無理があるんじゃないかと思うよ。しかし経済学者は学説を現実に合わせるのではなく、現実を学説に合わせようとし無理をしている面があるようなのさ。

 

例えば「経済人」という言葉があるが、人は経済合理性に従って行動するものとしている。しかし人は必ずしも経済合理性に従って行動するものではない。経済合理性に反してその人の好みで行動するのが現実の人間なのさ。経済学では人は皆「経済人」であり、これに反する行動をするものはいないことを前提に考えるといった、いい加減なところがあるんだよ。むやみに経済学を有り難がっていてはダメなのさ。何より大事なのは現実なんだから,そう思わないかね、お二人さん。

 

八:ところで経済学が現実に合わないってところをもう少し具体的に説明してくれませんか。

 

葉:そうだね。バブル崩壊後、政府がとった政策はバブルを引き起こした金融を引き締めることだった。金利を上げ、銀行からの貸し出しを抑え土地取引にお金が回らないようにしたんだよ。さらに緊縮財政で政府も無駄を省くこととなったわけさ。バブルというのは、物の生産・売買という実体経済のことではなく、土地とか金融資産の異常な取引の結果生じるものなのさ。本当はバブルの影響を実体経済に及ぼさぬような経済政策をとらねばならなかったんだ。

 

熊)それは具体的にどんな政策何ですか?

 

葉)バブル崩壊の結果、最も困ったのは民間の個人・企業だったんだよ。バブルに浮かれ身の程以上の借金をして、投資をしたり、土地などを買ったものはバブル崩壊により資産が大幅に減少し負債に苦しむこととなったのさ。だから借金返済のため消費・支出を減らさざるを得なかったんだね。

 

八)そうか!消費や支出が減るということはGDPが減ることになるんだな。そう説明されればよーくわかります。なるほどなるほど、合点ですね。

 

葉)民間が消費を減らさざるを得なかったのは分かっただろう。ここで政府がやるべきことはただ一つだったのさ。それが何だったか分るかな?熊さん。

 

熊)・・・・・

 

葉)少し難しかったかな。政府がやらねばならならないことは、民間に代わりお金を使いGDPを減らさぬようにすることだったんだよ。

 

民間と違い政府は別に利益を上げる必要はないのだから、この非常時に民間に代わってお金を使い一日も早く日本経済を成長軌道に戻す必要があったんだよ。それを政府も民間に歩調を合わせ、無駄を省こうと緊縮財政に走り当面やらねばならぬことまで先送りするというバカなことをやったんだよ。

 

八)そういえば、最近トンネル事故がありましたが、長年放置されていたと新聞には書いてありました。あれもその緊縮財政のあおりなんですかねー。

 

葉)良いところに気が付いたね。災害の多い日本のような国ではインフラの整備・維持は安全保障の一面もあるんだよ。不景気で金利の安い時期に政府が率先公共工事をやれば国益にかなうし、経済成長に随分効果があったと思うよ。20年前と比べるとこの公共投資は40兆円台から半分の20兆円まで減らされているんだよ。早く政府がこの点に気が付いてもらいたいものだよ。

 

熊)先の民主党政権はいい加減なことばかりやっていたような記憶がありますが、なんとかいう女性の閣僚が「事業仕分け」とか言って公共工事などの事業を見直し大ナタを振るい喝さいを浴びていたのを思い出しましたよ。「一番じゃなければダメなんですか」といって、スーパコンピューターの予算を削り顰蹙を買ったのはそう昔のことではないですね。ひどい話ですね。

 

葉)そうそう思い出したよ。「コンクリートより人へ」なんてえのもあったね!ものを知らない政治家には困ったもんだよ。困ったことといえば、現在の安倍政権も経済の本質が分っていないように見えることだよ。バブル崩壊時と同じように現在の経済学に縋りつき本当に今必要なことをやろうとしていないように見えるんだ。政権発足の際打ち出したアベノミクスは妥当なものだったが、次に発表したアベノミクス見直しには失望してしまったよ。公共投資もできるだけやらず緊縮財政で一日も早い財政再建をというのだから、これでは経済成長は無理だと思うよ。財務省の影響力が強すぎるんだろうか、困ったもんだ。今日も大分長くなったので、この辺でやめて続きは明日やろう。明日のテーマは財務省の嘘にしよう。よろしいかな。