分かり易い権力、難しい権威!

権力とは他人を支配し、服従させる力。支配者が組織・富・武力などを背景にし、被支配者に加える強制力と辞書にある。一方、権威を調べると万人が認めて従わねばならぬような価値の力と出ている。

 

日本という国が何時できたのか、あまりに古いので明確には分からない。第一代の神武天皇が即位されたのが、二千年以上前であったことは、神話やそれを裏付ける地質学上の発見、さらに神話に出てくる各地の遺跡等により、ほぼ確かなことである。それ以後、神武天皇の血筋を引く男子が断絶することなく皇位を継承してきたという信じがたいような国が我が日本なのである。国の始まりが明確に分からないほど古い世界でも珍しい長い歴史を持つ国である。長く続いた理由の一つに権威と権力の分離があると言われている。歴史的に日本は権威と権力が分離しており、それが日本の世界でも珍しい安定した社会、長い歴史を生み出したのであろう。

 

権力の元は力であり、その力が弱まれば次の力の強いものに権力の座を奪われることとなる。シナや西欧の歴史を見れば良く分る。一方、権威の元は何か良く分らないが、人々が権威に「サムシング・グレート」を感じているのだろう。日本の天皇が持つ権威は「神武天皇の血を引く男系の万世一系」にあるのではなかろうか。日本の天皇にはいくら力や財力や徳があっても普通のものは絶対になれない。それが権威の元なのであろう。さらにいえば、天皇の権威の元は日本文化ではないかと思う。昔から日本人が作り上げ、磨いてきた日本文化の総体を代々引き継いでこられたのが天皇なのではないかと考えるが如何であろうか。言葉は文化の重要な要素である。万葉集でも分かるように、昔は和歌が感情や意思を伝える言葉であった。身分や職業に関係なく日本人は和歌で結ばれていた。和歌は昔から歌い継がれてきているが、正月の歌会始でも分かるように天皇が中心となって今日まで続いている。これから類推できるのは言葉・和歌を通じて時の天皇が日本文化を総括している事実ではないだろうか。これが天皇の権威の源泉だと考えるのである。

 

日本は権威の国、これに対照的な国がアメリカである。次回、日本は権威の国、アメリカは権力の国という視点で書いて見ようと思う。