UNK通信の第1号は平成14年7月4日でした。それから16年、今回で400号となりました。これも偏に弊通信をお読みくださり、折に触れコメントやいいねで励まして下さった読者の皆様のお陰だと感謝申し上げます。最近、年のせいか物忘れが激しく通信を続けるのも難しいことが予想されます。この辺で一度ゆっくり今後のことを考えたいと思います。再び通信を再開することもあるかもしれませんが、取りあえず暫くは休刊としますのでご了承ください。長い間お読み頂き誠に有難うございました。最後に皆様方のますますのご健勝を祈念申し上げます。市中引き回し敬白

 

人災は防げるものだ!

自然災害と人災 平成14年7月4日

 

構造改革・民営化のもたらしたもの

バブル破裂の後、日本経済は深刻な不況に陥ることとなった。このままでは駄目だと小泉政権が、構造改革、民営化を強力に推し進め、日本経済の復活を謀ったが不況脱出は出来ず、ますます深みに陥ることとなった。構造改革と民営化は明らかに政策の失敗で自然災害と異なり、政治がもたらした人災だと言える。構造改革、民営化はもともとアメリカが日本の市場に参入する為、日本に迫ったため実現したものと言われている。構造改革、民営化はデジタル大辞典によると次のように書かれている。

 

「 社会が直面している問題を改善するために、政治・社会制度や産業構造などの抜本的な改革を推し進めること。日本では、小泉純一郎政権(平成13年4月~平成18年9月)が「構造改革なくして景気回復なし」「聖域なき構造改革」などのスローガンを掲げて断行した郵政民営化三位一体改革・医療制度改革などの一連の新自由主義的な施策を指すことが多い」また、朝日新聞朝刊(2015-11-25)には「小泉首相は慶大教授の竹中平蔵を閣僚に起用し、政策を立案させた。“民間にできることは民間に”を合言葉に、郵政3事業や道路公団などを民営化したり、公共事業を絞り込んだりして“小さな政府”を目指した。民間企業が活動しやすくする規制緩和などに力を入れた。」という記事が出たのを思い出す。

 

民営化してはいけないもの

民間企業は利益を追求するもので、儲からなければ参入しないし、参入しても儲からないことが分かれば①サービスの質を落とす②料金を上げる③撤退するのいずれかになるのは明らかである。国や地方公共団体が行う事業は利益を上げるのが目的ではない。国民の為になることをやるのが使命である。郵政、鉄道、水道、ガス、電力など本来民営化に馴染まないものである。国がやると親方日の丸になり放漫経営となるというが、そうならぬように知恵を絞ればよい話で、いきなり民営化するのは基本的な方向が間違っているので、どうも納得できない。

 

アメリカの要求に負け、小泉政権が強行した郵政民営化は本来無理なものであった。郵便事業は全国一律にサービスを提供せねばならない。一方、民営化すれば利益を出さねばならず、赤字は許されないので料金は高くなるのは止むを得ない。郵便事業で出る赤字を簡保や銀行事業でカバーするのが理想的で、民営化以前はそれが出来ていたのだ。それを小泉総理は無理やり民営化を強行したのである。本来なら郵政民営化が正しかったか数年後に検証すべきであったがそれはなされていない。地震や津波などの自然災害とは異なり郵政民営化は人災なので忘れてしまうのではなく、その成否を検証し正すべきところは正していかねばならない。この人災が現在問題となっているのが北海道である。次に北海道について見て見よう。

 

北海道の現在の問題点

北海道は現在大変な事態となっている。先のブラックアウトもその一例であるが、鉄道・道路について見てもこのままでは北海道の将来はなく、日本全体で見ても大きなロスが予想される。分割民営化されたJR北海道は地域的特性から利用客が少なく収益が上がらない。一方、冬季は雪も多く整備が大変である。これは関係者の努力の問題ではなく、国鉄の分割民営化が基本的に誤りであったと言うことなのだ。日本全体で見れば、人口集中地帯の本州と、四国・九州・北海道では鉄道経営の環境が大きく異なり、経営努力では解決できない問題なのである。人口集中地域で得られた収益で人口過疎地帯の鉄道を維持していかねばならない。日本の狭い国土を有効に活用するためにも鉄道・道路事業は日本全国均一のサービスを提供せねばならない。北海道は日本には珍しい広い平野を有し農業に適している。北海道を日本の食糧基地とする発想が必要である。その為には現在一本しかない青函トンネルの横に第二青函トンネルを掘り、これを自動車専用とし、既存のトンネルを鉄道専用とすれば、新幹線の速度・本数制限もなくなり新幹線効果が北海道全体に及ぶこととなる。第二青函トンネルにより道路事情も大きく変わる可能性が高い。自動車専用の第二青函トンネルにより大型トラックや大型バスが高速で走ることが可能となり、人や物の往来がスムースになり本州と北海道が一体化する。九州に新幹線が通った為、九州の経済事情が大幅に変わったのは記憶に新しい。

 

北海道の経済不振の為、静岡県ほどの土地がチャイナマネーに買い取られているらしい。このままでは北海道が日本でなくなる悪夢も現実のものとなる可能性が高い。ありもしない財政破綻に怯え、北海道に限らず全国で必要なインフラ整備を政府は怠っている。その中でも今、緊急にやるべきは北海道のインフラ整備だと思うが如何であろうか。発展途上国にインフラ整備の援助をする前に大切な北海道のインフラ整備をやらねばならない。政府がインフラ整備に金を出せば、それが最終的には国民の所得になり経済が成長、デフレ脱却に繋がるのである。北海道の現在の問題点の多くは、過去に行われた構造改革・民営化の誤りが象徴的に現れているものと思われる。

 

構造改革・民営化の誤りは人災!

日本は自然災害の多い国である。長い歴史の中で日本人は大きな災害に痛めつけられても、その自然災害を忘れ諦め新しい生活を始めて来た。政策の誤りのごとき人災も自然災害と同じく忘れてしまってもよいのであろうか。自然災害と人為的災害とは区別して対応すべきではなかろうか。その為には構造改革・民営化のごとき政策が行われた時は、数年後にその政策が正しかったのか検証すべきである。その検証の結果、誤りであれば直ちにその政策を修正すべきである。やりっぱなしは許されるべきではない。遅きに失したけれど郵政民営化もその結果を検証すべきである。産業界で広く採用されている「品質管理」という管理技法がある。その中にPDCAの輪という考えがる。何かやる時まず考え(PLAN)実行し(DO)結果をチェックし(CHECK)改善行動を起こす(ACT)このPDCAの輪を繰り返し回わすことで品質を高めていくのである。

 

政府が行う諸政策にもこのPDCAの輪の考えが必要なのではと思う。今は、やりっぱなし、消費税の増税もこのPDCAの輪を回してみるべきだと強く思う。前回の消費税増税後、消費が落ち込み現在でも消費は増税前の水準まで戻っていない。反省しないのは猿以下だと言えば猿も怒るのではないか。

今からでも遅くない。JRの分割民営化、郵政3事業の分割民営化、原発停止等政策の結果の検証はぜひやるべきだと強く思う次第。