本当に役立つものは?を問うノーベル賞
ノーベル賞受賞を国別に見てみると、日本はこれまで25のノーベル賞を受賞している。1位アメリカ352人、2位イギリス112人、3位ドイツ82人、4位フランス59人、5位スゥエ―デン32人、6位スイス28人に次いで堂々の7位である。アジアを見るとインドが5、シナが3で日本が圧倒的に多い。驚くのは日本のノーベル賞25のうち、19が平成の時代で、平成以前にはわずか6個の受賞なのである。
理由はいろいろ考えられるが、平成以前にまかれたノーベル賞の種が平成に花開いたと考えられる。
ノーベル賞の特徴
世界で多くの賞があるが、ノーベル賞はその中でも特別に評価されている。平和賞とか文学賞はちょっと異質であるが、物理学のような他の賞は、長い間謎とされてきたことに仮説を立て、それが真理であることが分かった時受賞の対象となる。研究の動機は「その研究が役に立つか」ではなく「真理に対する好奇心」の場合が多いように見える。多くの研究が「目先役に立つか否か」でなされているのに対し、ノーベル賞は「本当に役立つことは直ぐには分からない」という視点から「本当に役立つものはなにか」と、そのような研究に光を当てたものなのだろう。
大隅榮譽教授の場合
大隅教授は平成28年「オートファジー」の研究でノーベル医学生理学賞を受賞された。「オートファジー」とは不要となった蛋白質を分解する仕組みのことである。この仕組みの解明がガン増殖の抑制、病原体の排除に役立つことが分かってきたのはかなり後になってからのことである。研究の動機はがん治療が目的ではなかった。人がやらないような研究をしよう、さらにちょっとしたことへの好奇心であったという。基本的な細胞の機能を研究することが自分の使命であると信じ、研究を地道に続けて来た結果が受賞につながったのである。
受賞されたときの談話の一部を以下に載せておく。
「”役に立つ“ということは、とても社会をだめにしている。”役に立つ“=数年後に企業化できることと同義語。本当に役立つことは10年後、20年後、100年後にならないと分からない。将来を見据えて、科学を一つの文化として捉えてほしい」誠に味わい深く、感銘を覚えるのは筆者だけであろうか。
科学研究の現状
前掲のグラフは世界主要国の科学技術関係予算の推移を表している。今世紀に入り15年間、日本を除き世界は科学技術予算を増やしている。シナは11.2倍、韓国4.7倍、アメリカ1.6倍、ドイツ、イギリス1.5倍に対し日本は1.06倍15年前と比べほとんど増えていないのである。さらに悪いことは、この少ない研究費が「すぐに役立つ研究」に使われノーベル賞に結びつく基礎研究にはほとんど回らないという恐るべき実態がある。これも元をただせば、日本が過去20数年経済成長をしなかった付けの一つなのである。繰り返して言うが、科学技術予算が長年増えないのは経済成長をしないからである。この簡単な事実を真剣に考えない日本のリーダーには本当に腹が立つ。
文科省の科学技術研究予算も日本のGDPが伸び悩む中、財務省に厳しく査定され増額される訳がないのである。世界に冠たる経済成長を遂げた昭和の時代にまかれた種が平成に花開き19ものノーベル賞が日本にもたらされたのである。それを考えるとこのまま経済成長をせず、あと20年も経てば、日本はどうなるのか、心配を通り越して絶望的にならざるを得ない。森友・加計問題など延々と国会で議論している暇はない。20年後も世界に伍してノーベル賞を取れる日本を今の子供たちに残してやるのが今の大人の責任ではないのか。まず第一に経済成長をすることである。20年間居眠りをしていたのを取り戻すためにも世界の2~3倍の経済成長をするべきではないか。日本人よ目覚めよと大声で言いたい気分である。

