そんな我が家の食卓に肉が登場することは余りありませんでした。

食べるものといったら主食は麦ご飯、おやつにサツマイモが定番でこのサツマイモには大きな事件が起こりました。

当時(昭和27~8年ごろ)の金銭感覚は、コッペパン10円、ジャムをパンに塗ってくれるのが5円、コロッケ5円 トンカツ30円 卵10円そんな価格体系でした。

たまに母が出かけてお昼代として母から15円もらえる。自分で買う楽しみは最高の喜びでもあり、コッペパンは絶対に外せない!そして残りの5円で、コロッケを買って乗せるか?それともジャムを塗ってもらうか?とても悩む選択でした。

いつもの店屋さんでおばさんはコッペパンを開き、ジャムを載せてくれるのですが、一度載せたジャムをヘラで掻き取ってしまい、色だけしか付いていないときもありました。そのときの5円はとても虚しいものでした。損をした気分でそのおばさんに出会わないように店の中を覗いてからコッペパンを買いに行ったものです。

トンカツを食べる家族はどんなお金持ちが食べるのだろうか?とても未知なることでもありました。

子供の頃味わった食への思いは今でも鮮明に記憶しています。裕福な時代ではなかったからこそ、返っていろいろなものを感じ取ることも出来たのかもしれません。

 お陰さまで私には好き嫌いな食べ物がありません。お腹が空いている時代はどんなものでも美味しく食べることが出来た。どちらかと言うとこれから登場してくるサツマイモ事件から発するトラウマのようなものがあり、それがサツマイモを好んで食べない理由になっているくらいです

サツマイモ事件とは、わたくしが小学校2年くらいの頃だと思います。学校の身体検査があり、洋服を脱いで身体測定を行いました。そして測定が終わり自分の洋服を着たところ、なんとポケットに150円が入っておりました。どう考えても身に覚えの無いお金でもあり、どうしたら良いか解りません。しかし洋服には間違いはないのです。

私達の時代は子供が小遣いをもらう習慣はありありませんでした。当然母がくれるはずもありません。誰かに言えば良かったものをそれが言えず、下校してしまいました。

さー大変!このお金を持っていることは泥棒の始まり!と理解した私はお金の処分をしなくてはと考えました。

そこで思いついたのが焼き芋です。なぜかそのときは焼き芋しか思いつかなかった。そして150円全部焼き芋を買ってしまい友達を含めてそれを食べつくしてしまいました。未だにあの行動は反省をしており、第一になぜ自分のポケットにお金があったのかは定かではありませんでした。第二には折角150円もの大金を手にしておきながら全て焼き芋につぎ込んでしまったふがいなさを今でも腹が立ってきます。

あんな事件で味わったサツマイモは決して美味しい感覚ではありません。だから今でも焼き芋はあまり好きではないのは、この経験がそうさせているのだともいます。子供のころの経験が今でも引きずっているのですから、私にとっては重大事件でした。