その母が私をかばってくれたことが有りました。


私自身は子供の時から悪ガキだったのかもしれません。寮の子供達の中でも有名人だった。母から「タツヤ!!」と追い掛け回されていることが毎日で、その響き渡る声と、逃げ回る私との格闘を見ている周囲の人たちにとって、よほどの悪ガキに見えたのでしょう。


 あるとき、父が激怒!思い切って殴られたことがありました。ひとつ!ふたつ!と父の激怒は収まらなくなってきました。そのとき「母が頭だけは殴らないで!」と私の頭を抱え、父の激怒の前を立ちふさがってくれました。

その瞬間何が起きたのかよくわからなくなっていましたが、母が自分をかばってくれ身代わりになってくれたことを今でも鮮明に思い出されます。

毎日毎日、母から怒鳴り飛ばされ叱られっぱなしの自分にとって、母のこの行動はとても驚きでもあり、今考えると子供への愛の深さを改めて思い知らされました。今だからこそ感謝の言葉が出てくるのです。


 私にとって父はとても厳しい人でした。父の目を見て話すことも出来ないほどでしたが、その厳しさが自分自身の甘えた心に鞭を打ってくれたのかもしれません。人を裏切ることや、騙すことは絶対に悪いことだと教えられたのもこのような厳しさがあったからこそ身を持って知ることが出来たと思います。