「市場」という言葉を
私は「しじょう」と読む時と「いちば」と読む時があります
「いちば」は、農家の子であった私にとって
「はたけ」や「たんぼ」みたいに身近な言葉であり場所でした

父は、畑仕事よりも
市場に野菜を運ぶ仕事を、私に手伝わせることが多かったのです
私も、畑に行くよりは市場に行く方が好きでしたし
市場に行く手伝いは、嫌だと思ったことがありません

父と一緒にトラックに乗って市場に行き
トラックから野菜を下ろし、市場に並べるのを手伝うのです
夏休みなら、朝行くこともありましたが
夜に行くことも多かったです

当時から、「市場」については
「いちば」と「しじょう」の両方の呼び名があることは知っていました
ですから、どちらの呼び方にも親しみを感じます
そして「相場」という言葉も身近でした

やがて大人になり、経済の動きを見る場合には
「市場」と「相場」を考えることは当たり前になりました
そんなわけで、経済を中心に社会を観ることに
私は何の抵抗もありません

朝、市場に行くと
父は、トマトを何ケースか、直接、八百屋に売っていました
父の説明によれば
八百屋は鵠沼辺りのお屋敷の注文を受けていて
品質の良いモノを届けなければならないので
父から直接買うのだそうです

父は、どこで憶えたのか

「信頼のブランド」

という言葉が好きでした
自分が作る野菜が「信頼のブランド」だと言いたかったわけです

そういえば、小学校の時
供給という言葉を私が習ったことを知ると
父は、「需要」という言葉とセットで憶えるように言いました
当時の私には「需要」という漢字が難しく感じられたのを憶えています

今振り返ると
「市場」、「相場」、「需要」、「供給」、「ブランド」・・・
経済の基本概念は、すべて父から直接、生活の中で教えられたのでした
私は、ごく自然に、市場原理により社会と経済を観るようになったのでした