私は、畜犬の起源が中央アジアと聞いて
遊牧民が最初に畜犬を始めたと考えました
しかし、初期の犬が日本とアフリカに残っていると知って
この考えが揺らぎ始めました

日本人は遊牧民ではありませんし
柴犬も秋田犬も、牧羊犬ではありません
バセンジーも柴犬も秋田犬も猟犬です

興味深いのは、バセンジーが中央アフリカ、コンゴの犬で
森の狩猟採集民ピグミーの犬だということです
ピグミーは、黒人としては例外的に小柄で、しかも短足です
彼らは、アジアからアフリカに渡った
犬を連れた狩猟採集民の子孫なのではないかと
私は想像してしまうのです

現代の私達は、中央アジアというと
草原や砂漠を想像してしまいます
しかし、もしかしたら
一万年以上昔の中央アジアからユーラシア大陸全体にかけては
広大な森林地帯が存在したのかもしれないのです

やがて、気候変動や遊牧の広がりにより、森は失われ
狩猟採集民は、徐々に居場所を失っていったのではないでしょうか
そして、ユーラシア大陸の外側の、日本と中央アフリカだけに豊かな森が残り
その地域にだけ、狩猟採集民が残ったのだと考えられるのです

狩猟採集民は、遊牧民や農耕民に亡ぼされたのではなく
森の喪失とともに、遊牧や農耕を始めたのでしょう
やがて、遊牧民は遊牧民なりに、農耕民は農耕民なりに、犬を改良し
外見や性質の大きく異なる多種多様な犬種が誕生したのです

犬の多様性は
犬を飼うことを始めた狩猟採集民の
その後の多様なライフスタイルの変化を、そっくり反映したものだったのです
そして、犬を飼うという共通性だけが残ったのです

私達は、狩猟採集民というと
もっとも原始的なライフスタイルを持つ人々と思いがちです
しかしながら、縄文遺跡の遺物からは
広い地域と交易をしていたことが明らかになっています
しかも、交易の相手は、住む地域もライフスタイルも違う人々です

狩猟採集民は、けして未開の人々ではなく
商業民族と言ってよく、開かれた世界に生きていました
自然状況が変化したなら
自分達のライフスタイルを変えることを躊躇しなかったはずです

狩猟採集民は、地球環境の変化を受け
遊牧民や農耕民へと、ライフスタイルを変えていったのです
そして、犬を飼うという文化だけは
どのライフスタイルを選ぼうと、変わらなかったのです
犬と人間は、かくも相性が良かったのです