肉体労働を離れることへの罪悪感は
農家出身の私には、根深いものがあります
農家にとっては、勤勉こそが道徳の中心だからです

農家は、怠ければ生産が滞り
収入の道は閉ざされ、生活に窮するのです
勤勉であることは、生きるための至上命題なのです
そして、怠惰は、もっとも憎むべき悪徳です

農家は、一般的に、華美な服装を避けます
当然ながら、それらは農作業に不向きだからです
そして遊興に否定的です
遊興の溺れれば、勤勉に戻れなくなるからです

農家とて、立派な衣服を身につけることはあります
酒席に連なることもあります
しかしながら、それらは
特別な機会であり、日常ではありません

衣服だって”普段着”と”よそ行き”は区別されていました
これらは、農家に限らず、昔の庶民にとっては
ごく普通のことでしたが
農家は、もっとも、その傾向が強かったのです

勤勉を信条とし、贅沢や遊びを嫌い
汚れた格好が日常であり
近代的な楽しみとは無縁な生活が、農家の日常でした
しかし、それは必ずしも不幸ではなく
他人の目を気にしない家族中心の生活は
充実した幸福をもたらすものでもありました

農家は、他人の指図を受けず
家族中心の生活を、自分の意思でマネージメントできるため
自由があり、心の底に、誇りがありました
家族と自由と誇りを守るため
農家は、勤勉を正義とし、怠惰を罪悪としたのです