藤原正彦さんは、週刊新潮に連載中のコラムで
信州で使われる言葉を紹介されています
その言葉は、私の生まれ育った湘南地域でも
お年寄りが使う言葉でした

「へえ、秋だでな」

この意味は

「もう、秋だからな」

となります

また

「へえダメだ。夫婦でいざるようになっちまった」

これは

「もうダメだ。夫婦で足が不自由になってしまった」

という意味になります

私は、この「へえ」に注目しました
まさに、私の祖父母が使っていた言葉だからです
湘南の地元言葉と信州の言葉が、この点では同じなのです

「へえ」は、意味としては「もう」と訳してよいでしょう
しかしニュアンスは微妙に違います

「もう、ダメだ」

という表現には、絶望感が伴います

ところが

「へい、ダメだ」

という場合は、諦観が漂うのです
運命を受け入れる、静かな覚悟が感じられるのです

言葉は、、世の変化と共に変わります
消えて行く言葉に
私は、それを惜しむ気持ちを強く抱きます
「へい」という言葉でしか言い表せない
切ない感情があるからです

言葉を失うことで
感情まで喪ってしまうとしたら
ただ寂しいだけではなく
民族文化の毀損と劣化になると思います
それは、とても悲しいことです