新国立競技場のデザインが再考されることになりました

新聞記事の中で
3回のオリンピック出場経験を持つ陸上選手である
為末大さんの意見が印象に残りました

「競技場の外観ではなく、いつも競技場の中での空気感と観客との一体感が思い出される」

「スタジアムはどんな建物かではなく、そこにどれだけの人が集まるかで価値が決まる」

元サッカー日本代表の水沼貴史さんの意見も同様です

「選手と観客にとって、大事なのはスタジアムの中なので、外観にお金をかけるのはおかしい」

「選手のため、観客のためという視点が最初から欠けていたのではないか」

お二人の元アスリートの意見は正鵠を射ています
選手と観客の立場こそ、最優先とすべきなのです

私は、もともと、廃案になった国立競技場のデザインは評価していませんでした
流線型が斬新だという意見こそが陳腐だと感じていました
流線型が時代を象徴したのは20世紀です
飛行機や自動車が高速化し、空気抵抗の低減が不可避となり
流線型が時代を象徴するデザインとなったのです・・・100年前からの流行です
これのどこが斬新なのでしょうか?

しかし、これがコスト低減のための経済的なデザインであるとしたら
私は、このデザインでも良いと思います
ところが実際は、その逆だったのですから、話になりません

1964年の東京オリンピックの時
丹下健三が設計した代々木体育館は話題となった素晴らしいデザインでした
あのデザインが話題となったのは
人が地上から眺めた形状が、とても美しく斬新だったからです
図面や模型、航空写真で見た美しさではありませんでした

丹下健三は形の美しさを狙って、あの建物を設計したわけではありません
柱の無い広い空間を作るため、吊り天井の特殊な構造を採用したのです
その結果出来たのが、あの形なのです
機能の追求がもたらした美と言っていいのです
柱の無い空間を作って競技者と観客の一体感を盛り上げるためでした

もともと私は競技場の設計には興味がありました
擂り鉢状の形をしたコロセウム(円形競技場)こそ
古代ローマに始まる民主主義を体現する建築様式であると考えているからです
陸上やサッカーの競技場はもとより
野球場もそうですし、アメリカでは自動車レース場も、この形式です

観客が見つめる中で、ルールを基に競争するという
スポーツというものは、民主主義を象徴する文化なのです
スポーツの殿堂たる競技場は、民主主義を象徴するものでなければなりません