木村氏は、自分のリンゴ畑に
あの山の環境を再現することに熱中しました

大豆をまいたリンゴ畑からは雑草も生えてきます
それまでは丁寧に下草刈りをしていましたが、それもやめました
暖かくなると、リンゴの木の根元は、多様な雑草でぼうぼうとなりました
その中に大豆も生えているという状況です

お手本となる、例のドングリの木のもとには頻繁に通いました

生えている雑草を抜き、山と畑の根張りの違いを較べたり
地中に住む虫や小動物の様子を観察したり
土の温度、色、匂いを比較したり
五感をフル活用して調べたのです

しょっちゅう地面に這いつくばって
虫眼鏡を覗き、土の匂いをかいでいる木村氏を見て
周囲の人々は何と思ったことでしょう?

夏場になると、大豆は大きく伸び、日光を遮るため
雑草は生長を抑えられるようになりました
リンゴの木の下は、まるで大豆畑になりました
引き抜いてみると、大豆の根には根粒菌がびっしりと付いていました
抜いたあとの土の中には、ミミズがうねっているのが見えました

ただし、リンゴの世話をするのに、大豆は邪魔者でした
脚立を動かすのに引っかかって
虫取り作業は、たいそう骨が折れるのでした

秋に大豆を引き抜くと、根粒菌は一つもありませんでした
根粒菌が固定した窒素は、やせ衰えた土に養分として染み渡ったのです
木村氏には、リンゴの木が喜んでいるように見えました
秋まで、慣行農法の10%程度ですが、枝の先に葉っぱが残りました

木村氏は妻と義父に

「今度は何とかなりそうだ」

と報告しました

大豆は、枝豆を収穫して販売しました
値段は安かったのですが、子供達のノートや鉛筆を買うことができました