木村秋則氏がリンゴの無農薬栽培の可能性を信じたのは
けして妄想ではありませんでした
リンゴ以外の作物では、無農薬栽培は成功していたのです

米は、最初こそ収量が少なかったのですが
やがて従来農法に遜色無い収穫高になっていました
野菜なら、キュウリ、トマト・・・大根、メロンまで
無農薬で作れないものは無かったのです

果樹でも、西洋ナシやプラムは
農薬を散布していないにもかかわらず
リンゴの木ほどには、病気や害虫の被害が出ませんでした
毎年、美味しい実をつけるのでした

リンゴ畑の土壌を良くするために
大豆を播いてみました
その大豆は、鳩の餌になり、リンゴ畑に鳩が巣を作るようになりました

大豆を播き終えたリンゴ畑で
木村氏は無意識にロープを編んでいました
細いロープを編んで、ちょうど首をつるのにふさわしい太さにしたのです

木村氏は編んだロープを手に、岩木山を登って行きました
だいぶ登って、ほどよい枝のある木を見つけたので
枝にロープを投げると、うっかりロープを手放してしまいました

ロープを探そうとして、あたりを見回した時でした
突然、月光に浮かぶリンゴの木が目に入ったのです

「え!こんな所に、まだリンゴ畑があったのか?」

昔、岩木山は農林省の食糧開発事業で、中腹まで開発されましたが
その後放置され、農地はほぼ自然に還っていました

人の手が入らなくなって久しいその畑に踏み入ると
なんともかぐわしい土の匂いが鼻をくすぐります
足元はふかふかで、まるでクッションを踏みしめているようです

リンゴの木の前に立って見ると、虫がいません
当然、農薬散布など行われているはずもないのに
その木は、虫の被害は皆無で、力強く枝を張り、葉を繁らせていたのです

木村氏は、その時のことを

「確信しました。この環境を再現すれば、リンゴは実る。」

と、語っています