1ヶ所の畑で無農薬栽培を試みた時は
その畑から、たった1個のリンゴの収穫もなくても
他の3ヶ所の畑のリンゴの収穫がありましたから
木村家の収入はあり、生活はなんとかなりました

しかし、すべてのりんご畑を無農薬栽培にしてしまい
収穫がまったく無くなってしまうと
木村家の収入そのものが無くなってしまったのでした

木村氏は言います

「バカなことをしたものだ
地獄への一本道を駆け足してしまった
あの時は、斑点落葉病を抑える食品を見つけることしか頭になかった。」

木村氏は、少年時代から
一つのことに夢中になると、前後の見境がつかなくなります
アンプを作ったり、バイクの改造をした時など
完成するまでは一睡もせず、作業を続けるのでした

収入のことは、まったく考えていませんでした
試してみたいことだけが、次々と頭に浮かぶのでした
醤油、ワサビ、小麦粉、焼酎、牛乳・・・
卵の白身を試した時は、毎日黄身ばかり食べていました

眠って夢を見ても、そういうことばかり考えて
何か思いつけば、夜中でも起き出して、畑に行きたくなるのでした

唯一効果があったように見えたのは、畑の土でした
泥水にして沈殿させた上澄みを漉してポンプで散布するのですが
小さな砂がつまり、ポンプを何度壊したか分かりません
幸い、木村氏は機械の修理は得意でしたが・・・

その効果は、数枚の葉が枝に残る程度のものでした

リンゴの木は惨憺たるありさまでした
年を追うごとに、ひどくなっていきました
斑点落葉病は相変わらず猛威をふるっていました

そのうち、ものすごい数の害虫が発生するようになりました
虫の天国が始まったのです