猪瀬直樹による太宰治伝を読み終わりました

猪瀬直樹氏は今や東京都副知事です
石原慎太郎知事の要請に応えたものです
道路公団民営化では、政府委員として、小泉内閣のもとで働きました
文芸評論よりは社会評論で名高い文筆家です

その猪瀬氏の書いた太宰治論です
これが面白かった

太宰治は私の大好きな作家です
しかし世の太宰治論なんて、つまらなくて読む気もしません
太宰治が面白いのは、その作品なのであって
私には、本名津島修治の生涯については、二義的な興味しかありませんでした

猪瀬氏は、太宰が生涯繰り返した自殺未遂は
すべて実家からの資金援助を目的とした、狂言であったこと
作品のいくつかが、愛読者の日記を元に書かれたこと
日記がほしくて、女性と付き合ったこと・・・
などを暴露しています

本の題名は「ピカレスク」、悪漢という意味です
小説のためなら、女をだまし、誤って殺してしまった男
それが太宰治だというわけです
だから太宰はピカレスク・・・悪漢なのだ、ということです

猪瀬氏は、太宰治と兄貴分の井伏鱒二をこてんぱんにやっつけています
しかし私には、不思議と、太宰や井伏への敵意が湧きませんでした

作家に必要な能力は、想像力ばかりではありません
編集者の能力も高く評価すべきです
真に創造的な芸術家の仕事は、未だ芸術と認められないものを
芸術作品として世に提示することです

太宰も井伏も、私の見るところ、芸術家です
彼らの鋭いセンスが無ければ、それら作品は生まれず
多くの人々に感動を与えることはできなかったはずです