3月にはいって、警察から
ボースのための適当な家が見つかったという連絡が入ります
3月15日、ついにボースは中村屋を出ることとなりました

黒光は大急ぎでボースのために和服の礼装を調えます
それを着て中村屋を出て行くボースの姿は
見送る黒光の目には、堂々たる日本紳士に見えました

ボースに与えられた家は、現在の地下鉄乃木坂駅近くの路地の奥でした

引越し後しばらくして、ボースは
いままで世話になった人々をこの家に呼び、謝恩の宴を催しました
頭山満をはじめ、玄洋社・黒龍会のメンバー
中村屋の関係者、そして犬養毅も招待されました

ここでボースは感謝の挨拶を日本語で行い、人々を驚かせます
相馬黒光は感激のあまり、顔をあげることもできなかったといいます

ボースは自ら腕を振るったインドカリーを振舞い
これもまた、皆を喜ばせました
特に犬養毅は、このインドカリーが気に入ったらしく
わざわざ手紙にも、そのこと書いて寄こしたようです

この日ボースは、ある若い女性に目をとめます
相馬夫妻が、宴の手伝いのため連れてきた
長女の俊子でした

あの、15歳でヌードモデルとなった俊子です

俊子は英語が堪能で、口が固く、芯の強い女性でした
この能力が見込まれ、以後、ボースと中村屋の連絡は
彼女が中心的役割をすることとなります