相馬愛蔵の妻、黒光は
二人のインド人を匿ったことが政府に発覚した場合
自分が一切の責任を負って刑に服する覚悟をしていました

商売の名義が全て黒光のものでしたので
自分が勝手な振る舞いの出来る根拠になると考えたのです
夫には

「どうも妻が出過ぎたことをして・・・」

と言わせておけば
商売のほうも影響はなく、続けられると考えました

中村屋の中で、英語に堪能なのは黒光と長女の俊子だけです
俊子はミッションスクールの寄宿舎にいて、週末だけ帰宅するのですが
裸婦像事件の直後であり、これ以上余計な問題に関わらせるわけにはいきません
俊子には一切関わりを持たせず、黒光一人でインド人の世話をすることになります
しかしそこには、いくつもの困難がありました

黒光には生まれたばかりの赤ん坊がいました

俊子の問題の後、二人のインド人の問題と続き
心労の重なる黒光は、母乳の出が悪くなり
ボースらが中村屋に来てから2週間後の12月15日
この赤ん坊は死んでしまいました

赤ん坊の名前は「哲子」といいました

黒光はこの頃、すでに有名人でした
中村屋には黒光目当ての客も多いため、店を空ければ怪しまれます
そこで、じっさいには、相馬家の二人の女中が
ボースら二人のインド人の世話をすることになります

ただし女中達は英語がまったくできません
必要なことは、英語のメモを手渡し、女中達が取り次ぐ
・・・という方法しかありませんでした