1915年12月1日の夜
私服の刑事が、門前のタクシーの助手席から監視する中
寺尾邸では、ボースらのお別れの酒宴が、いとも賑やかに催されました
時々、寺尾亨の高らかな豪傑笑いが、邸の外にも聞こえてきます

やがて寺尾の妻が出てきて、大きな声で

「もう会えないかも知れないから、頭山先生にご挨拶に行きなさい」

と、ボースとグプターに言いました

二人は寺尾夫妻に暇乞いをして、頭山邸に入っていきました

頭山邸でも、賑やかな酒宴が続きます・・・

午後11時になると、頭山邸に集まった人々も帰宅し始めました
尾行の警官はボースとグプターの靴が玄関先にあるのを確認して
じっと待っています

寒い中を立っている警官に同情し
寺尾亨は、二人のインド人はもういないと告げます
警官たちは慌てふためきます

ボースとグプターは頭山邸から、忽然と消えてしまっていたのです

警官たちは頭山に哀願しました

「吾々を助けると思って、インド人を出してください、吾々は首になります」

頭山の答えは次のようなものでした

君達はよい功徳をした
君達が首になっても、それでインドの志士が助かるなら
その結果はインド3億の民を助けることになり
日本とインドとの国交を全うすることになる
大した手柄だ