これは人煎釜破壊事件より前の話です
本多作左衛門の強烈な忠誠心を示すエピソードがあります

ある時、徳川家康の家臣と織田信長の家臣がいさかい事を起こしました
こうした裁きは非常に難しい
双方が満足する解決策などあろうはずもなく
かといって、いい加減にすれば、織田と徳川の同盟関係にひびがはいります

織田信長は、冷酷な策を示しました

「鉄火をとらしめ、その理非を決すべし」

神前で、真っ赤になるまで加熱した鉄棒をつかませろというのです
正しい方は、焼けた鉄棒をつかんで、神前の棚に置くことができるはず
織田家から一人、徳川家から一人、それぞれ選んで
神前で、鉄火をとらせようというのです

家康はこの役目を本多作左衛門に頼んだのです
作左衛門は、この恐ろしい役目を見事にやり遂げました
織田の者は手を焼けただれさせて、鉄棒を投げ捨て、絶倒しました

家康には作左衛門への、強烈な信頼と、若干の負い目がありました
そうでなければ、自分の命令を妨害する家臣など許すはずがありません
即座に処罰したでしょう

家康は作左衛門を信頼するがゆえに、彼の言い分を聞きました
そして作左衛門の言葉に、真実と未来への指針を知らされたのです
家康は作左衛門の行為を不問に付したばかりでなく
感謝の言葉さえ口にしたのでした
作左衛門の持つ真実と信頼が、家康の心を動かしたのです