日本のみなさまへ

61年前、日米両軍は硫黄島で戦いました。
何万もの若い日本兵、アメリカ兵が命を落としたこの過酷な戦闘は、
それ以来ずっと両国の文化の中で人々の心に訴えかけてきました。
この戦いに興味を抱いた私は、硫黄島の防衛の先頭に立った指揮官、
栗林忠道中将の存在を知りました。
彼は想像力、独創性、そして機知に富んだ人物でした。
私はまた、栗林中将が率いた若い兵士たち、そして、
敵対するにもかかわらず
両軍の若者たちに共通して見られた姿勢にとても興味をもちました。
そしてすぐに、これをふたつのプロジェクトにしなければと悟ったのです。
私は現在、「硫黄島からの手紙」「父親たちの星条旗」という、
硫黄島を描いた映画を2本、監督しています。
まず、アメリカ側の視点から描く「父親たちの星条旗」は、
硫黄島の戦いだけでなく、
帰国した兵士たち、特に、星条旗を掲げる有名な写真に写った兵士のうち、
生還した3人の若者たちがあの死闘から受けた影響を追っています。
彼らは戦時公債用の資金集めのために都合よく利用されました。
戦闘そのものと、帰国後の宣伝活動の両方が彼らの心を深く傷つけたのです。

そして日本側。
若い日本兵たちは島へ送られたとき、
十中八九、生きては戻れないことを知っていました。
彼らの生きざまは歴史の中で描かれ、語られるにふさわしいものがあります。
私は、日本だけでなく世界の人々に
彼らがどんな人間であったかをぜひ知ってほしいのです。
「硫黄島からの手紙」では、彼らの目を通してみたあの戦いが、
どんなものであったかを描ければと思っています。
昨年4月、私は硫黄島を訪れる機会を得ました。
あの戦いでは、両国の多くの母親が息子を失っています。
その場所を実際に歩いたことは、とても感動的な経験となりました。
そして今年、私は再びあの島を訪れ、
2本の映画のために数シーンを撮影したのです。
私が観て育った戦争映画の多くは、
どちらかが正義で、どちらかが悪だと描いていました。
しかし、人生も戦争も、そういうものではないのです。
私の2本の映画も勝ち負けを描いたものではありません。
戦争が人間に与える影響、
ほんとうならもっと生きられたであろう人々に与えた影響を描いています。
どちらの側であっても、
戦争で命を落とした人々は敬意を受けるに余りある存在です。
だから、この2本の映画は彼らに対する私のトリビュートなのです。
日米双方の側の物語を伝える2本の映画を通して、両国が共有する、
あの深く心に刻まれた時代を、新たな視点で見ることができれば幸いです。

クリント・イーストウッド

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以上8月15日付け産経新聞の全面広告から全文転写しました。
私の”死者への敬意””生者の驕り”の考え方と共通するものがあるからです
私の考え方が特異なものではないこと、
宗教や民族性を超えたものであることが、ご理解いただけると思います
「父親たちの星条旗」は10月28日、
「硫黄島からの手紙」は12月9日に公開予定です