「空気人形」を観ました。
- 空気人形 [DVD]/ぺ・ドゥナ,ARATA,板尾創路
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哀しくて綺麗で狂気に満ちていて、かなり好きな世界観でした。
やっぱ邦画っていいなー!と思いました。
良かったのは、転んで破けて空気が抜けちゃった人形が、
好きな人から息を吹き込まれて再生するシーン。
あともうひとつ印象的だったのが、
主人公が朗読する詩。
吉野弘さんの「生命は」という詩です。
生命は 吉野 弘
生命は
自分自身で完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命はすべて
そのなかに欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ
世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思えることさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?
花が咲いている
すぐ近くまで
虻(あぶ)の姿をした他者が
光りをまとって飛んできている
私も あるとき
誰かのための虻だったろう
あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない
吉野弘詩集 (ハルキ文庫)/吉野 弘