~もんたさんと刑事のやりとり~②
「こんにちは、渡辺さん」
7月の暑い日の昼過ぎ、
刑事はタオルハンカチで
汗を拭き拭きしながら
四角い黒いカバンを
さげてやってきた。
カバンを開けると
中にはDNA鑑定の
器具らしいものが
「渡辺さん、口をあけてもらえますか?」
刑事はそう言うと、
綿棒で口の中全体をなするように
2、3分ぐるぐる回した。
その綿棒を
試験管のようなものに
入れてカバンを閉めた。
「1ヶ月くらいで鑑定の結果が出ます。まあ形だけのことなので・・・、一致したらすぐにお兄さんの住んでいた家のカギと通帳を渡しますので」
そう言って刑事は
愛想笑いしながら帰った
正直いくら遺産が
入るかわからないけど、
ようやくこの極貧生活から
脱出できると思うと、
この1ヶ月が
とても長く感じられた。
ちょうど1ヶ月経った日、
朝から携帯電話とにらめっこ
けど刑事どころか、
朝から誰からも着信が無い
しびれを切らせて
こちらから電話した。
「渡辺ですが、あの件どうなってますか?」
「いやあ、そのことなんですが・・・」
続く・・・