また二日酔いで迎える朝。

それもとても早く目覚めてしまう。

まだ5時前。


目をつぶってもめまいを感じるほど世界がぐるぐる回っていた。

最悪な気分だった。


カーテンを開けるともうすでに世界は一日を始めようとしていた。

世界は希望に満ちた仮相で、緑は豊かに生繁っていた。

わたしは絶望の淵にいて、はるかな深淵の底を探っていた。


何かを食べたいと思わなくなっていた。

それはスーパーの人に迷惑をかけてはいけないと思ったからであり、

単に外に出る気力がなかったからである。

それにマスクも持っていなかった。


わたしはもう一度眠るためにビールを開けた。

水のようなサンミグライト。

それを2本飲むと、寝起きの最悪な気持ち悪さは和らいだ。

窓を開け、さわやかな空気を吸い込んだ。

少し世界の希望と近づいた気がした。


それから、日がな一日、サンミグライトを飲んでいた。

ニュースとビール。

惨状と日常。

現実と非現実。

それらを行ったり来たりした。


毎日テレビに出てくる大臣や感染症専門家や医師会の偉い人のことを覚えていった。

感染症の恐ろしさに警鐘を鳴らしていたおばさんの感染症の専門家は、テレビに出始めのころはめがねをかけていた。

「目に飛沫が入って感染することもあります。だから感染症の専門家にはめがねをかけている人が多いんです」

と、言っていた気がする。

しかし、いつからかこのおばさんはめがねをしなくなって、化粧ばかりが派手になって、衣装も華やかなものになっていった。

お化粧して、おしゃれして、めがねをはずして、テレビに出て、

「出歩いてはいけません。どうぞお家にいて」

と言う。


吐き気がした。

わたしもビールの専門家か何かで呼ばれて、最初は、

「ビールを飲むときにはTシャツとスエットが最適です。

ビールのリラックス効果を高めてくれますから」

と言いつつ、だんだんと出演が増えていったら、

薄いぺらぺらのスカートをはいて、化粧をして、めがねを外して、

「ビールを飲むときにはぜひお部屋で過ごす格好で飲んでください。

気取った格好ではビールを楽しめませんから」

などと宣うのだろうか。


雨でも降ればいいのに、と思った。

世界の状況と世界の見た目はかけ離れていた。

世界は緑輝き、さあ、外で遊ぼう、と誘っていた。

えせ感染症専門家は自分を棚にあげて、

「そんな誘いにはのってはいけません」

と、わたしを叱責した。

「めがねはどうしたんだよ」

とわたしは言う。

感染症専門家のおばさんはそれ以上何も言わず、鳥になって飛んで行ってしまった。


via 修善寺文学
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