ここでご紹介するアズイフの法則は、
ウイリアム・ジェームズの著である『心理学の諸原理』が基になっています。
「これまでに書かれた心理学書の中で、最も刺激的であり最も見識の高い書物」
と評され、行動科学を学ぶ学生の必読書になっている知る人ぞ知る法則です。

多くの専門家や成功者の本でよく語られ、今や常識化していることに、

「まず考え方を変えなさい」
「プラス思考を心がけなさい」
「理想の自分の姿を思い描けば成功の確率が高まります」
「億万長者になったつもりで考えれば、不思議とお金が入ってきます」

・・・こうした方法は効き目がありそうに思えます。
ですが実際には効果のあがらない場合が驚くほど多い。

研究結果によると、楽観的に考えようとすると逆に苦労が増え、
理想の自分を想像し続けると昇進を逃し、
自分には無尽蔵に資産があると思い込むとお金を儲けそこなってしまう。
マイナスの感情をプラス思考に変えようとして戦うと、
その感情にとらわれるだけで、
かえってマイナス感情を心に根付かせることになる。

以上のように、思考を変えようとするだけでは弊害が大きい、
それよりも有効な方法があることを実証したのが、
ウイリアム・ジェームズです。

ウイリアム・ジェームズの最も輝かしい功績は、
たいていの人が当たり前と思い込んでいる現象に疑問を持ち、
実体を探ったことです。
常識から言えば、あるできごとや考えが感情を呼び起こし、
その感情が行動に影響を与えるように思える。
だが、一見わかりきった心の動きと思われる現象を調べたジェームズは、
通説に多くの誤りがあることに気づいた。
気づきの発端は、『種の起源』の著者で有名なダーウィンが
1872年に出版した『人および動物の表情について』である。
この著には世界で初めて感情に関する心理学的実験研究をおこなった記述があり、
「人間は人の顔の表情を見て、その人の感情を読み取る能力がきわめて高い」
ことをダーウィンが証明した。

ジェームズは、だとすれば自分自身が感情を体験するときも、
まったく同じメカニズムが働くのではないだろうか? 
つまり人は、相手の顔の表情を見てその感情を読み取るのと同様に、
自分自身の表情を感知して、自分が持つべき感情を判断するのではないか
と考えたのです。

ジェームズは、
『いかなる感情も、人が自分自身の行動を感知した結果生じる』
という仮説を立てた。
これは、人は自分が楽しいから笑うのではなく、
笑うから楽しくなるというわけである。

 アズイフの法則を実証するにあたって、つぎの実験がおこなわれた。
いまその実験にあなたも参加していると想像してみよう。
実験ではまず、嬉しさの度合いを1~10までの数値で答える。
つぎに、あなたは笑うように頼まれる。
ただし、一瞬にして消えるような目立たない笑い方ではない。

つぎの指示にしたがって笑顔を作る。
1 鏡の前に座る
2 額(ひたい)と頬(ほほ)の筋肉をゆるめ、口をわずかに開ける。
  ~これは、科学者のあいだで「ニュートラル」と呼ばれる表情で、
なにも描かれていない白いキャンバスと同じである~
3 口の両はしの筋肉を緊張させ、後方に引く。
  唇のはしをできるだけ引いて笑顔を大きくする。
  目尻の下にしわができるくらい頬(ほほ)をあげる。
  最後に眉(まゆ)をやや上にあげて、その表情を20秒ほど保つ。
4 顔の表情をもとにもどす。

  いまあなたは、どんな気分を感じているだろう。
 実験をはじめる前より、気分が明るくなったろうか。
いまの気分を1~10までの数値に置き換えると何点くらいだろう。

 たいていの人は、実験をしたあとは前より気分が明るくなったと答える。
ほんのわずか表情を変えるだけで、気分が大きく変わるのだ。

 この笑顔づくりを毎日の習慣にすると、
明るい気分をレベルアップできる。

習慣づけのための楽しい方法がある。
にっこり笑った自分の顔を2枚の紙に描く。
1枚はA4大の紙に、もう1枚は5センチ四方の紙に描く。
自画像はなるべく愉快な明るい絵にする。
出来上がったら大きなほうを家の中の目立つ場所に貼り、
小さなほうは自分の財布などに入れ、
笑顔づくりを思い出すきっかけにする。

 アズイフの法則が暗示しているとおり、
行動しだいで思うがままに感情を生み出すことが可能になる。

アズイフの法則による効果を得るためのメソッド(方法)を連載していきます。

出典 「その科学があなたを変える」リチャード・ワイズマン著 文藝春秋