
写真のヒーローは、伊賀の影丸。1961年~66年少年サンデーに連載であるから、そうとう古い。TVでは、63年に人形劇があったらしい。その記憶は薄くても、実はこのマンガで私は日本の地理を憶えた。まずは伊賀で三重県の位置を知り、次に甲賀忍者で滋賀県を知った。秋月藩で福岡を、葉山藩で神奈川を、そして飛騨忍群登場で、漢字すら書けなかった岐阜県の存在を学んだりもした。当時は、まだまだ忍者や武芸のヒーローも多かった。藤沢薬品提供の「風のフジ丸」やタケダアワーの「隠密剣士」、サンヨー電機提供の「仮面の忍者赤影」、映画でも「ワタリ」が上映されたりして、地理だけではなく次第に歴史にも強くなっていったのだ。伊賀の影丸で江戸城や服部半蔵の謎を究明したかと思うと、同じ作者(横山光輝)による赤影では、「豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎の頃・・・・」というナレーションとともに、戦国時代の変遷を語り始めたのもこの頃だっただろう。SF時代が足早に近づいていた60年代に、忍者が流行っていたのも不思議だけれど、忍者という使命のままに敵を倒す影丸の後ろ姿に、どこか危うい正義を感じていた子供たちも多かったかもしれない。地理と一緒に、正義も学んだ時代だった。
