ブラック企業の定義を聞かれたから答えてみるけれど、結局のところ答えはこうなる | Blog de Unionism | にいがた青年ユニオンの労働問題相談所

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「ブラック企業を定義しないと」と言われたので、簡潔に。

定義そのものが無駄作業


そもそも、自然発生的な言葉なので、明瞭な定義そのものがないところからスタートしている。そこに定義をつけようというのだから、難解になる。
時々刻々、言葉の意味は変化している。だから定義もそれに伴って変化せざるを得ない。
ブラック企業を定義することそのものが無駄作業である。それはまるで「生命とは何か」という定義と同じである。生命に新しい知見が生まれると、生命の定義はよりいっそう困難となる。結局のところ、生命の定義は、生命の性質をいくつか挙げることになる。
「ブラック企業」の定義をしようとすれば、それと同じ作業となるだろう。

ブラック企業の性質

「ブラック企業を公表する」という公約を掲げた政党もあるが、この使い方は、「違法な働かせ方をしていて、その中でも悪質な会社」という意味だ。

最低限、労働法を守っていることはベースとして成立しなければならない。
なぜなら、2つの観点があるからだ。
それは労働者保護の原点であり、会社間の自由競争を保障するものだからだ。
労働者保護は、いうまでもないが世界平和の基本である。
人類の存立をかけた権利である。
また、会社間の自由競争のなさ、これは明確に否定されなければいけない。
なぜなら、契約の自由を犯しているからだ。
つまり、基本的人権の基礎中の基礎を犯すことになる。
したがって、会社は最低でも労働法を守る必要がある。

「お金がないから残業代が今、払えない。ごめん」というのを許すのかどうかということだが、個人的感情はどうでもいい。それは個人で勝手に判断してもらいたい。
問題は、それをマクロで見て人類社会が成立するか否かである。

労働契約とは、労働者は労働力を時間売りし、使用者は賃金を支払う契約である。
使用者が残業させたのにもかかわらず、「手元に金がないから払えない」というのは経営者の甘え、能力不足、契約に対する誠実のなさ、そのものだ。
この市場から撤退すべき経営者である。
労働者を残業させた以上、もうけをだすのは経営者の責任である。
借金をして、労働力の対価を支払い、さらには設備投資を行って、もうけをそれ以上に出すのが経営者である。
労働力以外に何も売るもののない労働者と同じふうに行動してもらっては困る。

「そんなことをしたら会社がつぶれる」というかもしれない。
そうだ、そのとおり。
つぶれて結構である。
契約の自由を犯ことは、この社会では許されていない。
契約の自由は、日本国憲法にさえ書かれていない、あまりにも基礎基本でわかりきっているからこそ書かれていない、基礎中の基礎の基本的人権である。
契約を破ることは、自ら人間としての存在を否定する所行と知るがいい。
残業代すら払えない会社は、つぶれるべきなのだ。
空白になったニッチは、かならず別の会社が埋めるだろう。
ただし、支払おうとする努力はしたが、一時的に支払いが遅れたということまで否定するつもりはないし、失業者対策を行うことは、国民の勤労の義務に対応する国家の義務である。

法は守っていても、ブラック企業と呼んでよい会社もある。
36協定を結び、その範囲で残業を行わせているが、過労死する社員が出るような会社だ。
これは2つの観点から考える必要がある。
ひとつは、労働法はつねに労働者保護には不完全ということだ。
議会では、経営側と労働側とが競り合っていて、妥協でできたものが法令だ。
したがって、最悪な法令もある。
最悪な法令を遵守した結果、労働者は必ず守られると言えるか?
答えはノーだ。
もうひとつは、例の場合は残業時間の規制は事実上ないものの間接的な規制がある。36協定を結んだ労働者代表による規制と、労働安全衛生法の作業管理義務による規制だ。
しかし、いずれも機能しなかったから、過労死という悲劇が起きる。

なお、ブラック企業大賞2013となったワタミの場合は、過労死した従業員の家族に詫びないという姿勢が大きいだろう。つまり、反省しないということは、繰り返すという意味だ。

過労死をふたたび繰り返す。
その姿勢を見せていることが、ブラック企業と言われるゆえんだろう。

ブラック企業をつぶせ

労働法を守らないブラック企業は、どんどん処罰し、市場から撤退させるべきだ。

最悪な法令を遵守するブラック企業はどう対応したらよいだろう。
2つの方法がある。
各個撃破と法令改正のたたかいだ。
労働法とは、基本的には最低限を定める。したがって、「あとはあなたたちが自分で勝ち取りなさい」と日本国憲法は教えてくれている。
労働者の権利を十分に行使して、個別の会社とたたかう。
労働組合は、法律がどうこうは基本的に関係なく行動する。「私たちの労働条件向上のため」が行動原理である。暴力は否定されるが、そのために行動する、憲法上保障された団体である。
最悪な法令は、改正のために議会でたたかわなければならない。
そもそも、労働組合は誕生したときから議会闘争が必要だった。経営者らの手先の議員によって労働組合の存在そのものを違法化されたためだ。違法であろうと労働組合をつくりたたかった。何人も逮捕され、何人もの血が流れた。愛すべき人も巻き込まれて死んでいった。それでも、たたかった。世界は、世界大戦で混乱し、そして、今がある。
だから、労働組合は、愛する家族を守るため、平和を愛し、たたかう。
そのために、労働者の権利を守り、たたかう。
自分が倒れても、かならず仲間が乗り越えてくれることを信じて、たたかう。

経営者らもバカではないから、たたかいは何時までと言うことはない。
ただ、たたかわなければ愛する家族が犠牲になる。
それだけは、いやだ。
そう思う労働者だから、労働組合で、いまここで、たたかっている。

最悪な法令は、いつか必ず変えてやる。
そしてブラック企業をつぶしてやろうと思う。

なお、基礎基本を忘れた労働組合が世の中にあると噂に聞くが、そういう団体はつぶれてもらっていい。愛すべき家族を犠牲にする団体は、労働組合と名乗る資格はない。そういう団体を見たら、ぜひ今度から労働組合≪クズ≫と呼んでもらいたい。