わたくしは大物に縁がない。

技術が足りないこともさることながら、運も持ち合わせていないようだ。そんなわたくしであるが、唯一の自慢は一度だけ尺メバルを釣ったことがあるということだ。

忘れもしない2014年の12月末、仕事納めをするかしないかの頃。まだ45歳だったわたくしはいつものように同居人と夜中に出かけ、一晩中漁港で釣りをしてから午前中はクルマで仮眠し、午後から夕マヅメを磯で過ごしてからまた漁港という、今では考えられないようなスケジュールの釣行だった。

同居人との釣行は一つの法則があった。彼女がトイレに行ったり、先に釣り歩くか、または釣り遅れるなど、わたくしの前から姿を消すと比較的大きなのが釣れるというものだ。その日も彼女は対岸へ行くほど先行していた。そして釣れた。


今まで見たことがない生き物に見え、手が震えてしまった。コロコロと不便に転がるママメバルを早く海に戻してあげなければと急いで計測、30.2㎝。同居人は遥か彼方、記念撮影をすることなくリリース。それまでの記録が27.5㎝だったが、それらのサイズ感がまるで違うし、その後も泣き尺をなんども釣っているが、あの威圧感は今でも忘れらず、現在も尺メバルを追い求めている。目標は少し逸れて、自分の作ったルアーでというオプションが付いてしまったが。

当時はポイントを隠すことなく、全てをブログに書いていたので、首都圏に近く比較的安全な漁港で尺メバルが釣れたということで少し話題にもなった。その漁港のある地元の釣友も驚いた。その驚きは、そこで釣らなくても他にいくらでも釣れる場所はあるだろうということだろう。ただメバルにおける先達は、通い続けた結果だと言い、磯嫌いの友人は漁港の可能性を再確認したと言う。

それ以降、尺を超える大物に会ってはいないが、日々メバルのことを考え続けている。加齢による体力の衰えは45と50過ぎは大きな壁があり、あの時のような釣行はもうできない。今のノウハウがあの時代にあれば、また違う釣り人生が待っていたのかもしれない。

じょに太郎拝。