『ドッグマン Dogman』

Dogman

 

2023年 フランス [114分]

監督:リュック・ベッソン

製作:ビルジニー・ベッソン=シラ/スティーブ・ラビノー

脚本:リュック・ベッソン

撮影:コリン・ワンダースマン

美術:ユーグ・ティサンディエ

衣装:コリーヌ・ブリュアン

編集:ジュリアン・レイ

音楽:エリック・セラ

キャスト:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ/ジョージョー・T・ギッブス/クリストファー・デナム/クレーメンス・シック/ジョン・チャールズ・アギュラー/グレース・パルマ/イリス・ブリー/マリサ・ベレンソン/リンカーン・パウエル/アレクサンダー・セッティネリ 他

[解説]

「レオン」のリュック・ベッソンが実際の事件に着想を得て監督・脚本を手がけたバイオレンスアクション。
ある夜、1台のトラックが警察に止められる。運転席には負傷した女装男性がおり、荷台には十数匹の犬が乗せられていた。「ドッグマン」と呼ばれるその男は、自らの半生について語り始める。犬小屋に入れられ、暴力を浴びて育った少年時代。犬たちの存在に救われながら成長していく中で恋を経験し、世間になじもうとするも、人に裏切られて深く傷ついていく。犬たちの愛に何度も助けられてきた彼は、生きていくために犬たちとともに犯罪に手を染めるが、「死刑執行人」と呼ばれるギャングに目をつけられてしまう。
「アンチヴァイラル」「ゲット・アウト」のケイレブ・ランドリー・ジョーンズが主演を務め、圧倒的な存在感でドッグマンを演じきった。共演は「フレッシュ」のジョージョー・T・ギッブス、「ザ・ベイ」のクリストファー・デナム。2023年・第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。(eiga.com)

 

 刺激的なダークサスペンスと言ってもいいかな。主人公の生い立ちの回想で語られるので、全体の雰囲気は"ジョーカー“(2019)と言えば伝わるのかも知れませんね。実際同じテイストだなと思いました。むしろリュック・ベッソン節を期待していた向きには、肩透かし感がちょっぴり?ですかねw

 

●登場人物

ダグラス・マンロー♂:野犬の保護士

エヴリン・デッカー♀:精神分析医

アッカーマン♂:保険調査員

エル・ヴェルドゥゴ♂:裏社会のボス

サルマ♀:ボランティアからの人生の恩人

 

 主人公のダグラス(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)は、闘犬用の飢えた犬の手配を生業にしていたイカれたDV父と兄によって、幼少時に犬同様の扱いと執拗な虐待を受け続け一家は破綻状態、精神的に限界に達した身重の実母は泣く泣く家を出てしまうという気の毒な少年なので、心を通わすのは同じケージに押し込められた犬たちという究極状態です。なので大型犬からチワワやマルチーズのような小型犬まで、仲間として心が通ったと言う設定(好都合?)動物映画の苦労はうすうす知っているので、野暮な分析不要ですが。

 おまけに父の放った銃弾が脊椎の難しいところをヒットしてしまい、直立も数分という障碍を遺してしまいます。

 

 ダグラスはある事件で保護され、精神分析医エヴリンとの事情聴取で語られる生い立ちの過去から始まり、事件の(ある決断をする)昨夜までのじつはミシッと詰まった時間軸です。

 保護された施設でのサルマとのやり取りで身につけた演劇スキルや舞台で歌ったエディット・ピアフやリリー・マルレーンなどの楽曲が、生活の糧として語られ、女装の訳が語られます。

 その初ステージのお試し出演の件は、立っていることが維持できないとあって、演出が際立つ部分です。

 

 野犬保護施設の閉鎖などの苦境がやがて事件へと繋がって行きます。

 鼻の効く保険会社調査員アッカーマンが犬を使って窃盗を働いていたダグラスを追い詰めて返り討ちにあわせ、矢継ぎ早にエル・ヴェルドゥゴの配下の襲撃を交わした結果が映画巻頭の状態で、既に彼はこのときにはある崇高な覚悟になっていたのかなと思います。

 

 ワンちゃんたちの自然な演技に、なんか癒されつつ、暗めのファンタジーに仕上がっていました。良作ですね。