『ラスト・ムービースター』

The Last Movie Star

 

2017年 アメリカ [103分]
監督:アダム・リフキン

製作:ニール・マント/ゴードン・ホワイトナー/アダム・リフキン/ブライアン・キャバレロ

製作総指揮:ブレット・トマソン/エリク・クリッツァー

脚本:アダム・リフキン

撮影:スコット・ウィニグ

美術:ブレット・A・スノッドグラス

編集:ダン・フレッシャー

音楽:オースティン・ウィントリー

キャスト:バートレイノルズ/アリエルウィンター/クラークデューク/エラーコルトレーン/ニッキーブロンスキー/チェビーチェイス 他

 

[解説]

「脱出」「ロンゲスト・ヤード」「トランザム7000」「ブギーナイツ」など数多くの作品に出演し、2018年9月に82歳で亡くなったバート・レイノルズの最後の主演作。劇中にレイノルズの過去作品が多数引用され、落ちぶれたスターという役柄をユーモアたっぷりに演じる。かつては映画界のスーパースターとして一世を風靡したが、今では人びとからほぼ忘れられている状態のヴィック・エドワーズのもとに、ある映画祭から一通の招待状が届く。功労賞を送りたいという映画祭にしぶしぶ参加はしたものの、騙しに近い名もない映画祭であることがわかり、エドワーズは憤慨する。しかし、そこは彼が生まれ育ったノックスビルの町の近くだった。育った家、大学のフットボールで活躍したスタジアム……久しぶりにふるさとの町を訪れたエドワーズに懐かしい思い出が去来していく。監督は「デトロイト・ロック・シティ」「LOOK」のアダム・リフキン。(eiga.com)


 燃え尽き、ぐっと衰えを感じて今は侘しい生活をしているかつての大スターヴィック・エドワーズに届いた、いったんはゴミ入れに投げ捨てた“国際ナッシュビル映画祭”

を名乗る、バーに集う若者たちの素人映画マニアグループからの招待状(笑)

 ["国際"名乗っててもな〜?という予感]

有名な"ナッシュビル映画祭"に便乗というタイトルなのが明かされどうなることやら。

 

 親友で同じ俳優仲間だったソニーに煽られ、思い切って気分転換に行ってみた手作り映画祭は、想像の斜め下を行くような、ただの映画を出汁にしたビールパーティの様相を呈していたんですね。そりゃ期待するのもアレですが、愛犬も死んで気分を変えたかったんでしょう。空港に遅れて迎えにきたおねーちゃんは鼻/唇ピアスの見事にお腹のダブついたビッチで、ロクな宿舎も予算もない組織のグダグダで、すっかり老優ヴィックはイラついてしまうのでした。

 

●登場人物

ヴィック・エドワーズ♂:往年の映画スター

リル♀:映画祭のヴィック付運転手/ビッチだが絵を描く

ダグ♂:映画祭主催者/リルの兄

シェーン♂:映画祭のスタッフ/リルの幼なじみ

フェイス♂:映画祭のスタッフ

ソニー♂:ヴィックの親友

ビョルン♂:リルのセフレ/クズ

クラウディア♀:ヴィックの最初の妻

 

 老優ヴィックはいくら落ちぶれてもプライドがあるので、この素人たちが自分の過去を酒のつまみのように丸ごと馬鹿にしていると卑屈になりながら、人気絶頂の頃を思い出すという複雑な気持ち。

 送迎係のリルが喧嘩別れする一部始終を見聞きし、撃退法を教えるなどの交流を通じて少し気持ちが和らいで、後半の展開になります。

 

 ダグの映画祭の残りの日程をキャンセルし予定を変え、"ノックスビル"生家を見に行ったりアメフト選手時代のスタジアムの空気を感じ、アルツハイマーで施設にいて記憶をつなげないただ一人の存在クラウディア(最初の奥さん)の姿を思いやり、往年の大スター彼を知っていた一流ホテルのマネージャーは、予約の無い特別室のペントハウスルームを用意してくれ、兄ダグが惚れ込んでトロフィーまで贈りたい名優の栄光を肌で感じるリルなのでした。そして老優はリルのいささか個性的な絵の個展を薦め、若者たちの元気と故郷の懐かしさに浸ったヴィックは、無気力だった余生に何某かの気力を取り戻すことになります。

 

 バート・レイノルズの主演作の、若かりし頃の自分とのツーショットの会話は楽しく、含蓄のあるカットでした。この映画が遺作となったそうです。