『チキンとプラム』
あるバイオリン弾き、最後の夢
Poulet aux prunes
2011年 フランス/ドイツ/ベルギー [92分]
監督:マルジャン・サトラピ/ヴァンサン・パロノー
製作:ヘンガメ・パナヒ
製作総指揮:フランソワ=ザビエ・デクレーヌ
原作:マルジャン・サトラピ
脚本:マルジャン・サトラピ/ヴァンサン・パロノー
キャスト:マチュー・アマルリック/マリア・デ・メディロス/イザベラ・ロッセリーニ/ゴルシフテ・ファラハニ/キアラ・マストロヤンニ/エドゥアール・ベール/ジャメル・ドゥブーズ/エリック・カラバカ 他
[解説]
自作のコミック「ペルセポリス」を自ら映画化した仏在住のアーティスト、マルジャン・サトラピが、再び自身のコミックを映画化した初の実写映画。原作は2005年のアングレーム国際漫画祭最優秀作品賞を受賞した「鶏のプラム煮」。1958年テヘランを舞台に、楽器を壊され絶望したバイオリン奏者が、死を決意した最後の8日間で人生と叶わなかった愛を振り返るノスタルジックなラブストーリー。「潜水服は蝶の夢を見る」のマチュー・アマルリックが主人公の天才音楽家ナセル・アリを演じ、「ブルーベルベット」のイザベラ・ロッセリーニ、「クリスマス・ストーリー」のキアラ・マストロヤンニらが共演。(eiga.com)
作者マルジャン・サトラビがコミック作家であるため、大変凝った演出や表現法の多彩さで見応えのある形にまとまった、どちらかといえばダーク寄りの、たわいないお話です。自ら絵コンテを描いた時点で、相応しい表現方法を計算し自在に切り替え、効果的に取り入れています。紙芝居形式ありストープモーションあり、影絵劇の様なテイストや、8㎜フィルムのようなコマ落としや、ちゃんとしたアニメーションまで、それこそ自在に嵌め込んできているので、映像ファンとして楽しめます。
主人公ナセル・アリ・カーンはプライド優先のバイオリニストのようで、何より親が決めた嫁ファランギースを「一度も愛した事がない」と言い切る世間的にどうなのという恐妻家、いや嫌妻家なんでしょうね。スランプかどうかは、わかりませんが家にカネを入れないでキレられた挙句大切にしてたバイオリンを破壊され、たまたますれ違った昔の恋人?の思い出を引きずって自殺をしようと思う。ってこれは破綻以外の何者でもないでしょう。
そして死生観も放蕩三昧して心臓発作で死ぬ娘リリに「命なんて重要じゃない」なんて代弁させているのだから、迎え入れを果たせなかったイラーヌとの関係に、自殺を決意したあとも、いまさらグチグチとなるのは往生際悪いと思いませんか?まぁ人間的ではあるけれど(笑)、
●登場人物
・ナセル・アリ・カーン♂:苦悩するバイオリニスト
・ファランギース♀:冷え切った妻/数学教師
・イラーヌ♀:ナセルの元恋人
・キュロス♂:息子
・リリ♀:娘/酒と煙草に溺れ心臓発作死
・アブディ♂:ナセルの弟/共産主義者
・アズラエル♂:死の天使
なので死を思いついて検討をし、力なく死ぬまでに見る人生の走馬灯のような、私小説的な総決算ムービーになっています。
主演のマチュー・アマルリックのギョロリとした目を見ていて、ふと我が往年の名優志村 喬さんの「あの眼」を思い出しました。イラーヌ役のゴルシフテ・ファラハニ(『バハールの涙』など)の深い眼差しが、やはり印象的でそそります。
