『7500』

7500

 

2019年 ドイツ/オーストリア/アメリカ [92分]
監督:パトリック・ヴォルラス

脚本:パトリック・ヴォルラス

製作:マクシミリアン・レオ/ジョナス・カッツエンスタイン

撮影:セバスチャン・セイラー

編集:ハンスヨルク・ヴァイスプリッヒ

キャスト:ジョセフ・ゴードン=レビット/オミッド・メマー/アイリン・テツェル/カルロ・キッツリンガー/ムラタン・ムスル/ポール・ボリン 他

 

[解説]

「スノーデン」「インセプション」のジョセフ・ゴードン=レビットが主演を務め、飛行機をハイジャックされた操縦士の戦いを描いたサスペンススリラー。ベルリン空港から離陸した旅客機が、数名のテロリストにハイジャックされた。アメリカ人の副操縦士トヴァイアスはコクピットに押し入った男を乱闘の末に昏倒させ拘束するが、機長マイケルはガラス片で刺され命を落としてしまう。管制塔からの指示で近くの空港への着陸を目指すトヴァイアスに対し、テロリストたちは乗客の命と引き換えにコクピットのドアを開けるよう要求。人質の中には、トヴァイアスの恋人である客室乗務員ギョクチェも含まれており……。(eiga.com)

 

 操縦室内の限られた視点と情報不足を逆手に取ったハイジャック映画です。予算がどうこういう前に、リアルな事件では個人の視点から解ることは限られていますから、妙にリアルな不甲斐なさを感じることができるものです。これは「ある視点」を通してのみ描かれ得る佳作と言えるでしょうね。

 事件のほぼ全ての事柄はコクピット内と小さなインタホンの画像を通してしか把握できませんので、ただのガラス瓶の割れ破片だけを武器にして押し入ったテロリストの危険性と、そんなもので命を失ってしまう隣席のラッツマン機長と人質(恋人の CAギョクチェ )の命運を小さなモニター越しに見せられるトヴィアスの辛さは如何許りでしょうか。

 

●登場人物

トヴィアス・エリス♂:620便副操縦士

マイケル・ラッツマン♂:機長

ヴェダット♂:テロリスト/ラストまで居残る

ダニエル♂:テロリスト/リーダー格

キーナン♂:テロリスト/操縦室占拠

カルカン♂:テロリスト/客室内担当

ギョクチェ♀:CA/トヴィアスの彼女

ナタリー♀:CA

アレクサンダー・フランツ♂:警察交渉人

 

 表題の"7500"は旅客機が位置情報や状態を管制官に送るトランスポンダという装置に特定された暗号で、それ自体"メーデーメーデー、ハイジャック事件発生中"という意味を割り当てられ、侵入者に気づかれないで連絡のできる符丁のようなものだと説明されています。

 

 例えば仕事中の自室でだって、ひっきりなしにドンドンとドアをぶっ叩かれ、ここを開けろと叫ばれたら、自分が借金取りに追われた立て籠もり犯とでも錯覚しかねません(笑)。

 執拗なノイズ攻撃は卑劣な犯行とともに主人公を責め続けます。そこらへんの心理描写と演技が鬼気迫っていますね。しかも冒頭乱入のテロリストの持つガラス破片で負傷しつつ痛みに堪えて、操作のできない機器をなんとか作動させ、無理くり機体の安定を保とうとするんですね。ヒコーキ落ちちゃうからね(笑)

 そして一味の最後の生き残りヴェダッドが下っ端で、よく解らない一神教の無茶な原理主義に染まりきってもいないので覚悟が出来てもいないのを嗅ぎ分け、なんとか説得していく必死さがとても迫力がありました。説き伏せたと思ってもまたかぶりを振り、"ここまでやったから…もう引き返すことはできない"と、心の闇側に後退りしてしまいます。

 原理主義って何なんでしょうね。