『サード・パーソン』
Third Person
2013年 イギリス [137分]
監督:ポール・ハギス
製作:ポール・ハギス/マイケル・ノジック/ポール・ブルールズ
脚本:ポール・ハギス
撮影:ジャンフィリッポ・コルティチェッリ
美術:ローレンス・ベネット
衣装:ソヌ・ミシュラ
編集:ジョー・フランシス
音楽:ダリオ・マリアネッリ
キャスト:リーアム・ニーソン/オリビア・ワイルド/エイドリアン・ブロディ/モラン・アティアス/ミラ・クニス/ジェームズ・フランコ/マリア・ベロ/キム・ベイシンガー/ロアン・シャバノル/デヴィッド・ヘアウッド/オリバー・クラウチ 他
[解説]
「クラッシュ」「告発のとき」のポール・ハギスが監督・脚本を務め、リーアム・ニーソン、エイドリアン・ブロディ、ミラ・クニスら豪華キャストで描いたミステリードラマ。パリ、ローマ、ニューヨークと離れた場所で織りなされる3組の男女の物語が交錯し、やがて驚きの真相にたどり着く。パリのホテルにこもり、最新作を執筆していたピュリッツァー賞作家のマイケルは、野心的な作家志望の女性アンナと不倫関係にあったが、アンナにもまた秘密の恋人がいた。ローマのバーで出会ったエキゾチックな女性に心を奪われたアメリカ人ビジネスマンのスコットは、彼女の娘が密輸業者に誘拐されたと聞き、女性を助けようと決意する。ニューヨークに暮らす元女優のジュリアは、息子の親権をめぐって元夫と係争中。裁判費用を稼ぐため、女優時代に利用していた高級ホテルでメイドとして働き始めるたジュリアは、弁護士の助言に従い、裁判所からの心証をよくするために精神科医の鑑定を受けることになるが……。(eiga.com)
3組の男女にまつわる心のやりとりのふりをしている、ずいぶん凝った脚本です。ポール・ハギスといえばイーストウッド組の名脚本家として知られていますから、じっくり鑑賞して理解できなかったとすれば、体調が悪いか、題材がお気に召さないかなどの相性の問題かと思います。確かに登場人物が多く、それぞれのカップルは子供に関するトラブル(喪失と親権争い)を抱えているのですが、これは偶然とかではなく、主人公のマイケルが作家であり私小説的な作品を書いているということが、じつは一つの仕掛けと言えるのではないでしょうか?似通った運命の男女が一本の映画にまとまって登場?いやいやラストまで見ると仕掛けがおぼろげに見えるんですね。
- ●登場人物
- ・マイケル♂:作家。アンナとは愛人関係。
- ・ジュリア♀:客室係/息子の殺害未遂で精神鑑定中
- ・リック♂:画家/ジュリアの元夫。
- ・スコット♂:アパレルのデザイン転売屋/娘を亡くしている
- ・アンナ♀:作家/既婚者のマイケルと関係
- ・モニカ♀:ロマ族/娘の密航費用のためスコットを利用
- ・テレサ♀:スコットの元妻/ジュリアの担当弁護士。
- ・エレイン♀:マイケルの元妻/水恐怖症
- ・サム♀:リックの恋人/ジェシーに懐かれ実の親子のよう
- ・カルロ♂:モニカの娘を預かる?
- ・ジェシー♂:
パリのホテルの部屋に引きこもり、最新作を執筆する作家マイケルは、作家志望のアンナと愛人関係にあったが、アンナにもまた別の恋人がいる。
マイケルとアンナの関係では、その私小説に描かれる内容がスキャンダラスで、作品の元になったらしい革表紙の日記を読んでアンナが絶望に涙し、人混みに姿が見えなくなります。
元妻のエレインは冒頭でどうしても入れなかったプールで泳ぎますが、飛び込むシーンのみで姿が消え、鑑賞者はある不安に襲われます。
ローマのバーで出会ったエキゾチックな女性に心を奪われたアメリカ人のデザイン泥棒の男スコットは、彼女の娘が密輸業者に誘拐されたと知り、見ず知らずの女性を助けることを決意する。
スコットとモニカのエピではもしかしたら娘の拉致話が嘘であることも考えられるし、カルロの殺害まで考えて銃を用意したのにその娘の救出話にはならず、スコットの用意した現金を持って逃避行の旅立ちがフッと消える車で終わります。
ニューヨークで息子の親権をめぐり、夫と係争中の元女優ジュリア。裁判費用を稼ぐ為、高級ホテルのメイドとして働き始めることになるが、裁判所からの精神鑑定の当日、自身の不注意から鑑定日に遅刻する。
そして画家リックの元妻ジュリアは絵に描いたように不幸であり、息子ジェシーを抱きとめるのがやっとで、小さな熊のぬいぐるみを渡すと客室係の仕事に戻り、マイケルがアンナに贈った部屋いっぱいの白バラを全部部屋にぶちまけ、アンナを見失った雑踏でマイケルを見遣ります。
つまりじつはマイケルの書きかけた三つの作品の登場人物としてのみ存在し、最終的にマイケルのイメージの中に消えていくんですね。この映画は二、三回観たあとに、少し解ったような気がする捻った作品なのかもしれません。かな?