『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間

The Cave

 

2019年 タイ/アイルランド [104分]
監督:トム・ウォーラー

製作:トム・ウォーラー/カトリーナ・グルース

脚本:ドン・リンダー/トム・ウォーラー/カトリーナ・グルース

製作:トム・ウォーラー/アレン・リウ

製作総指揮:ジョナ・グリーンバーグ/デズモンド・オニール

撮影:ウェイド・ミューラー

美術:ポンナリン・ジョンホークラン

衣装:プリーヤナン・スワンナタダー

編集:リー・チャータメーティクン/アサマポン・サマックパン

音楽:オリビエ・リブートリ

キャスト:ジム・ウォーニー(本人)/エクワット・ニラトボラパンヤー/ノパドン・ニヨムカ/ジュンパー・センプロム/タン・シャオロン(本人)/エリック・ブラウン(本人)/マギー=アーパー・パーウィライ/ジェームズエドワードホーリー 他

 

[解説]

2018年、豪雨のため洞窟に取り残されたタイのサッカーチームの少年たちが奇跡的に助け出され、全世界でニュースになった救出劇を映画化。タイ・チェンライの洞窟に立ち寄った少年サッカーチームの12人とコーチが、豪雨による浸水で洞窟の奥深くに取り残された。彼らが洞窟の入口から4キロも離れた地点でようやく発見されたのは遭難から9日後のことだった。しかし、救出に向かうための洞窟内は数カ所が完全に水没し、穴の大きさも人がやっと1人通れる程度の狭さで、救出作業は困難を極める状況だった。やがて少年たちの命に危機が迫る状況の中、世界中から集まったケイブ・ダイバー(洞窟潜水士)たちによる救出劇が始まるが……。監督はタイ・バンコク出身のイギリス人監督トム・ウォーラー。ソフト発売時のタイトルは「THE CAVE ザ・ケイブ レスキューダイバー決死の18日間」。(eiga.com)

 

 この映画は実話事故のドキュメンタリードラマという感じなんだと思います。記憶に新しい事故で、思いの外悪条件が重なり手間取り、世界中が固唾をのんで注目していました。ですから少年たちの命運を握った世界各国のダイバーや、軍関係のさまざまな立場と、祈って止まない僧侶や信心深い普通の人々の、ただひとつにまとまった無事であって欲しいという"想い"の映画ということが出来ます。

 

 コントロールされた救出作戦には、やたらなボランティア支援が殺到しても邪魔になります。高性能の排水ポンプの提供を進言するメーカーのプーヤン社長も、手順を踏まないからとお役所仕事に門前払いを掛けられそうになりますが、人脈で何とか活躍のチャンスが与えられますが、雨季の事故であったため、大量の排水は麓の水田を水没させてしまいます。

 映画の組み立てとしては、少年たちの個々のエピソードは省いて、起こってしまった事態を人々の協力や祈りで何とかしてやりたい、大人たちは子供を護るものなのだという意思を感じさせます。それは水没農地の補償金を辞退する農民の「作物はまた育てればいい。子供の命はそうはいかない」という台詞に集約されているでしょう。

 

 割合比重を掛けて扱われる、スコットランドのエキスパート洞窟ダイバー:ジム・ウォーニーも、主役の単独ヒーローとして描かれません。この事故で唯一落命したタイ軍のレンジャー:サマン・ダナンの悲報で使命を感じ要請された、一介のボランティアとして救出作戦に加わったようなものと言ってもよいでしょう。重要な脇役ですが、彼が意思決定し行動するのも、奥さんはじめ周囲の理解と協力は欠かせなかったでしょう。

 

 全般外連味ない演出(逆にリアル)ですからエンタメを求める向きには低評価のようですが、最後に救出されたコーチの無言の嗚咽に安堵させられます。

 孤立数日後の薄暗闇でサッカーチームとしての連帯感と気力を保つため、ただ一人の年長者の彼は、「何が食べたい?何をしようか」と勇気づけるんですね。

 それらのことの総合として、この救出劇はきっと何かの要素が欠けていたなら、犠牲者があったのかもしれません。