『コロンバス』

Columbus

 

2017年 アメリカ [103分]
監督:コゴナダ

製作:アンドリュー・ミアノ/アーロン・ボイド/ダニエル・レンフルー・ベアレンズ/クリス・ワイツ/ジュリア・カルーゾ/キジン・キム

製作総指揮:ビル・ハーニッシュ/ルース・アン・ハーニッシュ/マックス・A・バトラー/マッティア・ボジャンキーノ/ベアトリス・カメラナ

脚本:コゴナダ

撮影:エリシャ・クリスチャン

美術:ダイアナ・ライス

衣装:エミリー・モラン

編集:コゴナダ

音楽:ハンモック

キャスト:ジョン・チョウ/ヘイリー・ルー・リチャードソン/ミシェル・フォーブス/ローリー・カルキン/パーカー・ポージー 他

 

[解説]

モダニズム建築の宝庫として知られるインディアナ州コロンバスを舞台に、対照的な2人の男女の恋愛模様を描いたドラマ。アルフレッド・ヒッチコックや小津安二郎についてのドキュメンタリーを手がけ、小津作品に欠かせない脚本家の野田高悟にちなんでコゴナダと名乗る映像作家による長編デビュー作。講演ツアー中に倒れた高名な建築学者の父を見舞うため、モダニズム建築の街として知られるコロンバスを訪れたジンだったが、父親との確執から建築に対しても複雑な思いを抱いており、コロンバスに留まることを嫌がっていた。地元の図書館で働くケイシーは薬物依存症である母親の看病のためコロンバスに留まり続けていた。ふとしたことから出会った対照的な2人は建築をめぐり、語り合う中で次第に運命が交錯していく。韓国系アメリカ人のジン役を「スター・トレック」「search サーチ」のジョン・チョウ、ケイシー役を「スプリット」のヘイリー・ルー・リチャードソンが演じる。(eiga.com)

 

 モダニズム建築の宝庫と言われるインディアナ州コロンバスの建築群が主役と言っていいくらい、かっちりとした映像が肝のドラマですが、如何せん動きがないので絵葉書やムック本の美しいベストショット(それはそれで見事です)を見せられている気持ちになります。それゆえ統制された直線が切り取る空間はσ(^^;みたいなアウトドア大好き人間にはとても落ち着かない風景なので、そのぶん感想がシフトしてると思います(笑)。

 

●登場人物

ケイシー(カサンドラ)♀:建築のガイド勉強中

ジン♂:在米韓国人建築学者の息子ソウルで翻訳

ゲイブ♂:ケイシーに言いよるインターン

エマ♀:イ・ジョンエン教授の秘書

エレナ♀:ケイシー母/薬物依存療養中

 

 静謐という言葉が似合う美しく静かな映画です。なのでキャメラはほぼほぼド決まりの構図に固定されていて、人物を追ってわずかに移動したりが全編通して数回、それもゆっくりという感じです。それだけにモダニズム建築の美しさが際立つ風景が印象に強く残ります。

 

 固定された世界観の中で登場人物だけが動いているので、このことが余計なニュアンスをつけない素直な心の動きに思えて、小津安二郎映画への傾倒を口にする監督さんらしいとは思いました。

 

 時系列は同じでも、その前のカットからのこぼれたセリフをうまく受けるような編集なのでしょう。ただしジンケイシーも自分の身内のために時間を割かなければならず、そんな明るい気持ちになるわけもなく、映画としては俯き加減なのが自分の気分には合わないような印象でした。想いはあっても行き擦りに言葉を交わした関係より先に進まないのも少しマイナスかなと思います。

 

 とは言え静かな印象は好ましいので、たまにはこんな浸れる映画もいいものだと思います。