『私のちいさなお葬式』
Karp otmorozhennyy
2017年 ロシア [100分]
監督:ウラジーミル・コット
製作:ニキータ・ウラジーミロフ
脚本:ドミトリー・ランチヒン
撮影:ミヘイル・アグラノビチ
音楽:ルスラン・ムラトフ
キャスト:マリーナ・ネヨーロワ/アリーサ・フレインドリフ/エブゲーニイ・ミローノフ/ナタリヤ・スルコワ/セルゲイ・プスケパリス/アントン・シピニコフ/タチアナ・トゥゾワ/オリガ・コジェブニコワ/アルチョーム・レシチク 他
[解説]
突然の余命宣告を受けた73歳の女性が自身のお葬式計画に奮闘する姿を描いたロシア映画。村にただひとつの学校で教職をまっとうし、定年後は気のおけない友人たちと大好きな本に囲まれ、慎ましくも充実した年金暮らしを送っている73歳のエレーナ。そんな彼女が病院で突然の余命宣告を受けてしまう。都会で仕事に忙しい毎日を過ごし、暮らし5年に一度しか顔を見せないひとり息子のオレクには迷惑はかけたくないと、自分で自分の葬式の準備をスタートさせる。惨めな死に方だけはしたくない彼女の願いは、お葬式に必要な棺や料理の手配を済ませ、夫が眠るお墓の隣葬されること。親友やかつての教え子たちの協力もあり、彼女はお葬式の準備を順調に整えていく。しかし、完璧かに思えたエレーナのお葬式計画に想定外の事態が持ち上がってしまい……。(eiga.com)
人間誰でも老境に来て患えば、そんな心配は瞬殺で打ち消しても少しは頭を過ぎる"臨終"という、気づけば重くて暗くなるテーマを、軽妙な語り口でむしろポジティヴに魅せる、ヒューマンコメディと言っていいと思います。
具体的に死期を告げられれば、あれやこれや主人公エレーナが考えたように「他人に迷惑だけは掛けたくない」のは自然なことかも知れません。
●登場人物
・エレーナ♀:元教師73歳
・リュドミラ♀:隣家/パーシャの祖母
・オレク♂:エレーナ長男/モスクワで事業家
・Dr.セルゲイ♂:教え子/監察医
・パーシャ♂:隣家のバイク青年
・スヴェータ♀:教え子/雑貨店経営
・ナターシャ♀:オレクの元恋人/アル中
・ワレーラ♂:教え子/コイをくれた
クスッとなるシーンの連続に、案外メッセージが込められている感じなので、後から反芻すると意味づけもできる感じでしょうか。生前葬のような比喩でなく自分を葬るにはお役所仕事が煩わしかったり、死亡診断書を事前に捏造したり、べつに法に逆らう意図はなくても現実の手続きとの齟齬が生じる、「そうかそうゆこともあるな」と楽しく鑑賞できました。現実には誰か周りの人間がバタバタするだけかも知れませんが。
鯉の件もそうで、ガサツなガキだった教え子のワレーラが処刑しようとガンガンぶっ叩くのを制止する恩師というのは、可笑しく思えてもここで浦島太郎した意味は、後からついてきます。疎遠だった息子オレクが、初めてもうじきいなくなるかも知れない母を、大切に思うようになって行くのも、一連のドタバタがいいスパイスで、冷凍室からの生還も鍵を呑み込んでしまうのも、オレクが思い余って放流して、くるぶし丈に過ぎない池に身を投げるのも、この映画のテイストに見合った、さらっとした笑いの要素を混ぜることでラストシーンをしっとりほっこりしたものにしてくれますね。
そういう穏やかな気分で観られるのも、このみんなから慕われてきた地元の元女教師というキャラクターと、主演女優マリーナ・ネヨーロワのおっとり感が自然体で素敵です。登場人物との絡みも良く隣家のばーちゃんリューダはじめ、バカ孫息子のパーシャや老齢の友人たちとの会話や葬儀屋の棺の件や墓掘りのエピなど面白かったです。
「恋のバカンス」岩谷時子:作詞/宮川 泰:作曲は、ロシアでも直訳タイトル「カニークルィ・リュブヴィー」としてヒットして親しまれている世界的な名曲なんですね。
