『ディアスキン 鹿革の殺人鬼

Le daim

 

2019年 フランス [77分]

監督:クァンタン・デュピュー

製作:マチュー・ベルアエジュ/トマ・ベルアエジュ

脚本:クァンタン・デュピュー

撮影:クァンタン・デュピュー

衣装:イザベル・パネッティエ

編集:クァンタン・デュピュー

キャスト:ジャン・デュジャルダン/アデル・エネル/アルベール・デルピー/マリー・ビュネル 他

 

 

「アーティスト」のジャン・デュジャルダンが主演を務め、鹿革ジャケットに異常なほどの愛情を持つ殺人鬼が巻き起こす惨劇を描いたフランス製スリラー。憧れの鹿革ジャケットを手に入れたジョルジュ。フリンジのついたカウボーイ風のジャケットは完璧で、それを着た自分は非の打ち所がないほど美しい。その異常なまでの鹿革への愛情は、やがて自分以外でジャケットを着る者への憎悪へと変わっていく。ビデオカメラを片手に街へ繰り出したジョルジュは、"死のジャケット狩り"を開始する。共演に「午後8時の訪問者」のアデル・エネル、「ニューヨーク、恋人たちの2日間」のアルベール・デルピー。「ラバー」のカンタン・デュピューがメガホンをとった。「のむコレ3」(2019・11/15~ 東京:シネマート新宿、大阪:シネマート心斎橋)上映作品。(eiga.com)

 

監督さんの"クァンタン"の綴りはQuentinなので、なんか只ならないものを期待します。英語読みだと"クェンティン"のこの監督さん、劇中で『パルプ・フィクション』のタイトルを引き合いにした台詞を入れて来ます。

 

あ、はぁ、ジャン・デュジャルダンだったのか、いささか肉が乗って見間違えました。せっかくお気に入りの鹿革のジャケットもジョルジュが「俺に似合うピッタリだ」という主観に反して着丈も袖丈も寸足らずで、お腹の辺りがはみ出し気味というのがいいですね。あとで手に入れるハットもブーツもアンダーサイズで、ちぐはぐな滑稽さがジョルジュの主観の"COOLでカッチョいい俺"を際立たせます。クスクス笑い必至です。

 

この映画のちょっと変わった視点は、バーカウンターのドゥニー(アデル・エネル)の台詞にあるように、社会の見る目:外見によるお仕着せの価値観へのアンチテーゼといえるかも知れません。何しろ常識で測れるところが無い映画ですから、ここはつまり寓話的解釈が必定で、このエキセントリックな主人公ジョルジュの姿を通して、内面性や虚栄心、孤独感が浮き彫りになることが主要で、記号としてのジャケット狩りの殺人は思いの外あっさりと、天井扇のブレードを"鍛えた"スバラシイ刃物でサクッと行っちまうんですね。それでも"洗練された俺"になって行くジョルジュは、スェードのフリンジジャケットに返り血避けの雨合羽を羽織ります(笑)。

 

登場人物で印象的なのは、なにも言わず無言でたまたま居合わせて、無機質な視線をジョルジュに向けるアンガールズ山根タイプの少年てすね。彼の只「おっちゃん、何やってんの」という冷静視線をどう捉えたら良いのでしょうか。

 

とても面白い、人間の可笑しなところを抉り出す、衝撃的(笑)な映画です。もちろん連続殺人の異常性や犯罪性をクダクダ語る映画ではありませんが、一歩引いた結末もなかなかやってくれてます。なにかちょっと80年代を意識した、旧いフィルムのような褪せぎみの色調と、ラストに流れる歌が耳に残ります。