『バイス』

Vice

 

2018年  アメリカ  [132分]

監督:アダム・マッケイ

製作:ブラッド・ピット/デデ・ガードナー/ジェレミー・クレーマー/ウィル・フェレル/アダム・マッケイ/ケヴィン・メシック

製作総指揮:ミーガン・エリソン/チェルシー・バーナード/ジリアン・ロングネッカー/ロビン・ホーリー/ジェフ・ワックスマン

脚本:アダム・マッケイ

撮影:グレイグ・フレイザー

美術:パトリス・バーメット

衣装:スーザン・マシマス

編集:ハンク・コーウィン

音楽:ニコラス・ブリテル

特殊メイク:グレッグ・キャノン

キャスト:クリスチャン・ベール/エイミー・アダムス/スティーブ・カレル/サム・ロックウェル/タイラー・ペリー/アリソン・ピル/リリー・レーブ/リサ・ゲイ・ハミルトン/ジェシー・プレモンス/ジャスティン・カーク/エディ・マーサン/シェー・ウィガム/ビル・キャンプ/ドン・マクマナス/ナオミ・ワッツ/アルフレッド・モリーナ  他

 

[解説]

「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のスタッフ&キャストが再集結し、ジョージ・A・ブッシュ政権でアメリカ史上最も権力を持った副大統領と言われ、9・11後のアメリカをイラク戦争へと導いたとされるディック・チェイニーを描いた社会派エンタテインメントドラマ。1960年代半ば、酒癖の悪い青年だったチェイニーは、後に妻となる恋人リンに叱責されたことをきっかけに政界の道へと進み、型破りな下院議員ドナルド・ラムズフェルドの下で政治の裏表を学んでいく。やがて権力の虜になり、頭角を顕すチェイニーは、大統領首席補佐官、国務長官を歴任し、ジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領の座に就くが・・・・。これまでも数々の作品で肉体改造を行ってきたクリスチャン・ベールが、今作でも体重を20キロ増加し、髪を剃り、眉毛を脱色するなどしてチェイニーを熱演した。妻リン役に「メッセージ」「アメリカン・ハッスル」のエイミー・アダムス、ラムズフェルド役に「フォックスキャッチャー」「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のスティーブ・カレル、ブッシュ役に「スリー・ビルボード」のサム・ロックウェルとアカデミー賞常連の豪華キャストが共演。第91回アカデミー賞で作品賞ほか8部門にノミネートされ、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した。(eiga.com)

 

先日の『記者たち 衝撃と畏怖の真実』と続けて鑑賞する、というのは相乗効果になって良いのではないかと思います。つまり同じアメリカの、いや全世界の不幸の始まりに大いに関わりを持つことになった、怪物キーパーソンの名前が飛び交う実録ものとして、偶然にでも見事な補完関係になっているからです。

 

面白い題材の調理法の違いと、徹底的に化けるメインキャスト群。凄いです、クリスチャン・ベール/スティーブ・カレル/サム・ロックウェルの超コスプレイ(笑)。そして、エンタテインメントとしての側面は、実に楽しく魅力的で、映画ならではのアクロバットを見せてくれます。全編通してチェイニーの"親戚みたいな者"という謎のナレーターの正体とか、映画半ば前に失意にかこつけてロールアップするフェイクエンドロールのお遊び。たらればの場面転換。

 

チェイニーの趣味として扱われるルアーキャスティングに準えて、偽情報と権力操作のトリックを創出したチェイニーの、じつはポンコツな内面性と、妻リン(エイミー・アダムス)の内助の功がもたらす応援も、丸っきりルアーキャスティングのようなものです。論点すり替えの末に当事国の首謀者にされたサダムフセインの気の毒、オサマ・ビン・ラディンとの連携を"予言"されたザルカゥイの動きで生まれてしまったISIS。イカれたJr.ブッシュは、チェイニーの思うまま。

 

そして現実にそれが為されたあとの、激痛な今の世界情勢。良くも悪くも、笑えないブラックコメディとして仕上がっていますし、 ラストのオマケ映像のミーティングシーンのドタバタも可笑しかったです。改めてアメリカの病巣と一握りの怪物たち(政治家)が操る、危うい現実世界の恐ろしさを感じてしまいます。面白恐ろしかった一本です。