『ブリッジ・オブ・スパイ』
BRIDGE OF SPIES

2015年 アメリカ [142分]
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:マット・チャーマン/イーサン・コーエン&ジョエル・コーエン
製作:スティーヴン・スピルバーグ/マーク・プラット/クリスティー・マコスコ・クリーガー
製作総指揮:アダム・ソムナー/ダニエル・ルビ/ジェフ・スコール/ジョナサン・キング
撮影監督:ヤヌス・カミンスキー
音楽:トーマス・ニューマン
出演:トム・ハンクス/マーク・ライランス/スコット・シェパード/エイミー・ライアン/セバスチャン・コッホ/アラン・アルダ/オースティン・ストウェル/ミハイル・ゴアヴォイ/ウィル・ロジャース 他



スピルバーグ+コーエン兄弟+ハンクスという事で、エンターテイメント系の映画とは異なる期待をしていました。冷戦時代の実話ですが、今も世界はかなり危うい均衡の上に辛うじて成り立っていることを意識させてくれる重厚な作品と言えます。

主人公のドノヴァンは有能な弁護士実績から、スパイ容疑で逮捕されたルドルフ・アベルの国選弁護人として当てられます。核技術に関する情報が殊に重要な50年代には、スパイは処刑しろという短絡的な意識も民衆にはあり、何かのための手駒として殺さずに収監するため、アメリカの憲法に則った正当な裁判を受けさせるという力学があったのかもしれない。そのための有能な弁護士の起用だったのではないだろうか。そんな中で絵画を描くスパイ……アベルとドノヴァンは弁護活動を通じてある種の信頼を見いだしていく。

一方アメリカは、ソ連領の超高空偵察任務に特化した偵察機U-2の開発とパイロット養成計画を進めていて、作戦中の対空砲火によりパワーズというパイロットが撃墜されてしまう。こちらも極秘のスパイ活動だから、本来不時着時には機体の破壊と絶命のマニュアルだったが、パワーズは捕らえられてしまい、米・ソ双方が「手駒」を交換する案件が発生し、ドノヴァンはその駆引きをすることになり、東西に分断されたベルリンが取引場所になる。さらに東欧における経済を学ぶ米人学生プライヤーが身柄を東ドイツに拘束され、難しい局面になってしまう。

当時のアメリカは東ドイツを認めていないため、より複雑な要素が加わり、間接的な交渉が更に緊迫感に繋がっている。

グリーニッケの鉄橋では、アベルとパワーズの交換、同時にベルリンの壁の中ほどの検問所"チェックポイント・チャーリー"で学生プライヤーの解放をめざす。アベルはドノヴァンに自分で描いた絵を差し出す。
1・1・1(ワンワンワン)がドノヴァンの口癖。

ベルリンでドノヴァンは、分断の壁を乗り越えようとした東側の若者が銃撃され死ぬところを、電車の窓から目撃する。全てが終わりNYに帰ったドノヴァンは電車の車窓から、若者たちがフェンスを乗り越えたりして遊んでいるのを優しく見送るのだった。

素晴らしかったです。観ているときより、感動が増幅して来ました。