『鑑定士と顔のない依頼人』

(監)ジュゼッペ・トルナトーレ
(出)ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルヴィア・フークス、ドナルド・サザーランド、フィリップ・ジャクソン

[131分]

トルナトーレ監督といえば、あの名作『ニューシネマ・パラダイス』を監督したのが20代後半だったと思うが、紛れもない才能の映画作家と言えるだろう。

この映画も、作者の名に恥じない一級品の仕上がりだ。

美術品の鑑定士が一流であればあるほど、仮に彼が嘘をつけば、その嘘が嘘であると見抜ける人は居るだろうか、というパラドックスがベースにある。主人公は自らの立場を利用し、極私的な肖像画のコレクションをしている。決して完全な善人でないところが物語のミソ。

数多くの謎が謎を呼び、明かされない謎を残す。

クレアとカフェにいるクレア。

襲ったのはだれか?

等など、ミステリーはミストの向こうに。妙な謎解きは途中で辞めにして、極上に浸るのがベストだろう。