2016年新発売!「春暁」の一節「春眠暁を覚えず」で有名な孟浩然の全訳が発売を開始致しました!
その一部を限定公開致します

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3宿天台桐柏觀 天台の桐柏観(どうはくかん)に宿す
海行信風帆 海行(かいこう) 風帆(ふうはん)に信(まか)せ
夕宿逗雲島 夕宿(せきしゅく) 雲島に逗(とど)まる
緬尋滄洲趣 緬(はる)かに尋(たず)ぬ 滄(そう)洲(しゅう)の趣(おもむき)
近愛赤城好 近くに愛す 赤城の好きを
捫蘿亦踐苔 蘿(つた)を捫(と)り 亦(ま)た苔(こけ)を践(ふ)み
輟棹恣探討 棹(さお)を輟(や)め 恣(ほしいまま)に探討す
息陰憩桐柏 陰(かげ)に息(やす)まんと 桐柏に憩(いこ)い
採秀尋芝草 秀(しゅう)を採(と)らんと 芝草(しそう)を尋ぬ
鶴唳清露垂 鶴唳(かくれい) 清露垂(た)れ
鷄鳴信潮早 鶏鳴(けいめい) 信(しん)潮(ちょう)早し
願言解纓紱 願わくは言(ここ)に 纓紱(えいふつ)を解(と)きて
從此去煩惱 此(こ)れ従(よ)り 煩悩(ぼんのう)を去らん
髙歩陵四明 高歩(こうほ)して 四明に陵(のぼ)り
玄蹤得二老 玄蹤(げんしょう)の 二老を得ん
紛吾遠游意 紛(ふん)す 吾が遠游の意(おもい)
樂彼長生道 楽(ねが)う 彼(か)の長生の道
日夕望三山 日夕(にっせき)に三山を望めば
雲濤空浩浩 雲涛(うんとう)は空(むな)しく浩浩(こうこう)たり
船旅は風任(まか)せ、夕暮れに雲深い島に宿る。仙界の趣(おもむき)を遠くに尋(たず)ね、赤城山の素晴らしさをまじかに楽しむ。藤の蔓(つる)をつかみ苔(こけ)を踏んでは進み、舟を下りて思いのままに探訪した。木陰を求めて桐や柏の下で憩い、瑞(ずい)草(そう)を摘(つ)もうと霊草を探す。清い露に濡れて鶴が鳴き、潮の流れを鶏が告げる。これより世のしがらみから遠く離れ、煩悩を捨て去りたい。俗事を離れ四明山に登り、老子や老莱子(ろうらいし)の跡を追おう。遠遊の思いが溢れ、不老長寿の道を学ぼうと願う。日暮れに海上の三神山を望めば、雲と波がただ広々と続いているばかり。
○天台 天台山。浙江省(せっこうしょう)天台県北2㎞に在る霊山。最高峰は華頂峰で1138m。○桐柏観 唐の著名な道士である司馬偵(しばてい)が既に荒廃した道観(三国呉の赤鳥二年(239)に建立)を再建した道教の寺。○滄洲 仙人の住む所。滄浪洲。○赤城 赤城山、天台山の一部分である。孔(こう)霊(れい)符(ふ)の会稽記に「赤城(せきじょう)は山名なり、色は皆な赤く、状は雲霞に似たり。」とある。○捫蘿亦踐苔 文選巻一一・孫興公・天台山に游ぶの賦一首「穹隆(きゅうりゅう)の懸磴(けんとう)に跨(またが)り、萬丈の絶冥に臨む。苺苔(ばいたい)の滑石を踐(ふ)み、壁立の翠屏(すいへい)を搏(と)る。樛木(きゅうぼく)の長蘿を攬(と)り、葛藟(かつるい)の飛莖を援(ひ)く。」○採秀 文選巻三三・屈平・九歌二首山鬼「三秀を山間に采(と)らんとすれば、石(いし)磊磊(らいらい)として 葛(かつら)蔓蔓(まんまん)たり。」三秀とは一年に三度咲くという瑞草。○言 語助詞。意味はない。○鶴唳 鶴の鳴き声。○信潮 定期的に干満する潮の流れ。○解纓紱 役人を辞めること。しかし浩然は官僚ではないので、黒川詩注が指摘するように文苑英華に従い「解纓絡」と改めるべきである。纓絡は束縛の意であるので、ここは全ての束縛から解放されてとなる。○髙歩 俗事を離れること。文選巻二一・左太冲・詠史八首「褐(かつ)を被(き)て閶闔(しょうこう)を出で、高歩して許由を追う。」○四明 四明山。天台山の支脈。孟浩然集は壁に作る、全唐詩により改める。○玄蹤 奥深い足跡。○二老 老子と老莱子。文選巻一一・孫興公・天台山に游ぶの賦一首「羲農(ぎのう)の絶軌を追い、二老の玄踪を躡(ふ)む。」孟浩然集は三老に作るが全唐詩により改める。○紛 盛んなことの形容。楚辞・離騒「紛(ふん)として吾(われ) 既に此の内美有り。」なお、孟浩然詩集箋注・佟培基・上海古籍出版(以下箋注と略称)が「紛吾」と一語にとるのは誤り。○長生道 老子・第五十九章「是(こ)れを、根を深くして柢(てい)を固くし、長生久視の道なり、と謂う。」○日夕 午後四時ごろから日暮れまでの時。○三山 三神山。蓬莱(ほうらい)、方丈(ほうじょう)、瀛洲(えいしゅう)。○浩浩 広々としたさま。
附注 開元九年の作。(黒川詩注)
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