俘虜記 (新潮文庫)/大岡 昇平
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解説にもありますが

「俘虜になる前」「俘虜になった後」

で大きくテンポが異なります。

実は 「何故自分は米兵を殺さなかったか」

のくだりが高校時代の教科書に掲載されていました。

案外高尚な文学を扱っていたのですね、高校の教科書は…。

それを知ったのは大学1年の夏でしたが。


大岡はこの作品を「小説」としています。あくまで「随筆」ではない。

自身の体験を色濃く反映しているのだが(クリスチャンだったくだりを含め)あくまで小説

(文学論には明るくないので、定義などは私はわからないのですが、こういった小説もあるという面白みはあります。)

終始冷徹な分析が展開されています。


当初 阿諛 という単語は現代の日常生活には用いられないので当惑しました。

時々辞書を要しました。

(ジャーナリストであったために入隊したのが遅かったという事情もあったのでしょう。

歴とした学者であったために余計な表現がなく、非常に洗練された文章です。

それがまた、冷徹な分析と相性がよいのです。)


夏になると戦争を扱った小説などを読み返したくなり、

今日はたまたまこの作品を読み返しましたので感想を更新しました。

大学の友人など周囲では彼の作品を読んだ事がある人はおらずじまいですので。