安部 公房
人間そっくり

「私が●●」である という事実

がいかに確立され得ないか、ということが。

そして「私は●●」でない という反論に立ち向かうことの意味のなさ

をコミカルに描いています。


安部公房の作品に多くある「私って何?」という自我の喪失は

相変わらずあります。

(「箱男」「壁ーS・カルマ氏の犯罪-」など読んでいる方には単調に感じるかもしれない

展開がベタというより、 「私」の喪失までの過程が長い割に話自体が短いから

だからこの書は安部公房入門にはいいかもしれません。


あらすじは


「こんにちは火星人」のラジオ番組を作っているSF作家のもとへ

「自分は火星人だ」と名乗る男に訪問される。

彼は常人か否か、そして彼は実際に火星人か否かの4択が交差する。

限られた場所で展開する状況で、その作家は自分が一体何者かわからなくなる。



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かつて安部公房をよく読んでいたことがありました。

その旨を担当医に打ち明けたところ、非常に興味津々でした。

(担当医はADHDの専門家)

「私」が消えてしまいたい感覚?と受け取ったのかも知れません。

あるいは自分と社会の違和感を感じていたと受け取っていたのかも知れません。

それについて否定するつもりはないけれど

(まぁ当時は何かしら惹かれて読んでいたのだし、どうして惹かれていたのかよく覚えていない)

現在は、「自分が●●である」ということを失うあるいは失ってしまうことへの恐れや違和感

には興味があまりなく、

どちらかというと「自分は現状から変わらなければならない」という感じることが多い ので、

だんだん遠のいてしまった作家です。


まぁ、言ってしまえば、現実逃避する暇がなくなったか、

哲学的に物事を深く考える余裕がなくなったかってことですかねヽ(;´ω`)ノヽ(;´ω`)ノヽ(;´ω`)ノ