インドに生息するカリッサの根から取れるエッセンシャルオイル | エセ化学者の理科の学校

インドに生息するカリッサの根から取れるエッセンシャルオイル

今日は、エッセンシャルオイルに関する最新の文献を紹介します。

科学の文献で使われる英語の勉強にもなりますよ。

Carissa opaca がわからなかったので、Wikipediaで調べました。Carissa opaca Stapf ex Hainesは品種の名前でした。カリッサ属(Carissa)はキョウチクトウ科の常緑低木からなる属で、観賞用に、また果物として果実を食用にするため栽培され、花は白または桃色で、クチナシのような芳香のあるものもある。果実は酸味が強いがよい香りがあり、ジャムなどにすることが多いそうです。

 ただし、この文献で使われたものは、インドのニューデリーにあるアラハリ山の周囲に野生で生息するものだそうです。今回はその根っこから取れた精油の話です。


タイトル

2-Hydroxyacetophenone, the Main Component of the Essential Oil of the Roots of Carissa opaca Stapf ex Haines


National Institute of Plant Genome Research (India) 所属です。インドの国立植物ゲノム研究所でしょうか?
Sushil Kumar et,al. ( et,al. ~ら  研究者が複数いるときに代表者以外略したことを示します
J.Essent. Oil Res., 21, 385 (2009) 文献の出展です。斜体で書いてあるのが雑誌の名前、太字は巻号(下線で書くこともあります)、ノーマル体がページを表し、カッコ内が西暦です。これで文献が特定できるんですね。

 実は雑誌名も略してあって、J.Essent. Oil Res. は、Journal of Essential Oil Research を略しています。略した単語の後は、必ずピリオドを打ちます。


Abstract
The volatile oil obtained by hydrodistillation of the roots of Carissa opaca was analyzed by GC and GC/MS to study its composition. Thirty-five compounds representing 98.3% of the oil were identified. Si-gel chromatography of the oil yielded 2-hydroxyacetophenone, which was characterized by spectral method (1H-, 13-NMR and mass), as the main component, amounting to 89.5% of the oil.

(以下本文より抜粋)
In an earlier study on the flower oil contained mainly hexadecanoic acid (82.5%). This compound was found as a minor constituent of the oil of the roots of the plant. Methyl salicylate was found as minor component in both of flower and root oils. 2-hydroxyacetophenone which was found as the main component of the oil of the roots, was not detected in the flower oil.


 この植物の根っこを水蒸気蒸留して得られた揮発性の精油は、GC(ガスクロマトグラフィー)、GC/MS(ガスクロがついた質量分析装置(マススペクトル)により分析した結果、35種の化合物でその精油の98.3%を占めるものでした。シリカゲルクロマトグラフィーで分離した結果、2-ヒドロキシアセトフェノンが精油中に82.5%含まれていることがわかりました。また、この構造は プロトンNMR、13C NMR、およびマススペクトルで決定しました。

原文をそのまま書きましたが、1H と 13Cの後にハイフンをつけてはいけません。またフォントの都合で表示できませんが、1 および13は上付きで書きます


 初期の研究で、この植物の花からとれる精油は主にヘキサデカン酸を82.5%含んでいました。しかしこの化合物は根っこから取れる精油にはわずかしか含まれていません。サリチル酸メチルは花にも根にも微量含めれていて、根っこに最も多く含まれている2-ヒドロキシアセトフェノンは、花から取れる精油には検出されませんでした。


ザット見て、文献の内容はこれだけでした。2-ヒドロキシアセトフェノンが検出されました!だからどうした?と聞きたくなります。なぜそうなのかの考察(私としては植物中の生合成経路の推察)などをしてほしかったのですが… 最新の文献にしては少々お粗末な感じです。(国立植物ゲノム研究所なのにね?)


最後に今日の宿題です。


 エッセンシャルオイルを勉強していらっしゃる皆様へ、ここで出てきた2-ヒドロキシアセトフェノン、ヘキサデカン酸、サリチル酸メチルの構造がわかりますか?考えてみてください。

 

 さらに、理系の大学生の方へ、プロトンNMRで得られる情報を3つ挙げてください。