アロマオイル解説:臨時講義  バニリン | エセ化学者の理科の学校

アロマオイル解説:臨時講義  バニリン

以前より予告してましたバニリンについて、今日は臨時講義です。

バニラといえば、ケーキ、お菓子、アイスクリームをはじめとする、食料品の代表的なフレーバーです。天然品は、バニラビーンズなどから抽出したものが用いられますが、その香りの主成分はバニリンという物質です。



右に構造式を示しましたが、ベンゼン環 (カメノコ)に水酸基が直接つくと、この場合に限ってフェノールと呼び、通常のアルコールと区別されます。フェノール類の化合物は非常に殺菌力が強いのが特長で、病院で用いられるクレゾールも代表的なフェノールの仲間です。

vanillin


 

 バニリンにはこのフェノール基とメトキシ基、そして、アルデヒド基(CHO)の3つがついた構造を指定ます。アルデヒドは酸化されて、カルボン酸になりやすく、フェノールはカップリングという反応が起こりやすく、バニリンはそのため反応性に富み、非常に色がつきやすい特長を持っています。

 バニラビーンズは、生のままでは殆どバニラのにおいを感じないらしいです。これはバニラビーンズに含まれるバニリンが糖類とくっついた形で存在しているためで、これを外すため、熱を加える作業を行います。これをキュアリングといいます。これにより、配糖体が加水分解し、バニリンが出てくるわけですね。

 自然界にバニリンによく似た化合物がいろいろ存在します。この中でも、バニリルエチルエーテルカプサイシンは、口中に入れると激しい辛味を感じ、またこれらは皮膚に塗っても熱い刺激を感じることができます。カプサイシンはもう有名ですね。このように、極少量で生体に大きな刺激をもたらす物質を生理活性物質といいます。

 さて、これらの物質が辛さ、熱さを感じるのは、皮膚や粘膜にある受容体(レセプター)がその物質を認識して、電気信号を発するのが始まりとされています。カプサイシンなどを感じるレセプターは、TRPV1と呼ばれるもので、皮膚の温度を上げることなく、辛さ、熱さを感じます。TRPV1はじつは痛覚のレセプターの1つであり、別名VR1ともよばれ、これはバニリノイドレセプターの頭文字です。

 つまり、痛覚とバニリンは非常に深い関係があるんですね。