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ビデオ『ムーンライト』
2016年バリー・ジェンキンス監督作品。
米国の貧困地域で母親からネグレクトされながら生きていく黒人少年の、
成人期に至るまでの半生を描いた人間ドラマ。
主人公の、少年期、青年期、成人期の3つの時期を描いていく。
地味なマイナー系の作品ながらアカデミー賞作品賞を受賞したことで話題になった作品。
ただし、ポスタービジュアルの、
貧相な(失礼)黒人少年のアップ写真や、
近年のアカデミー賞に受けそうな社会問題を捉えた作品。
と言うことで辛気臭いイメージを持ってしまって干渉をスルーしていた。
それで、制作は実はあのA24であることを後に知った。
ザックリ言って「ちょっと風変わりなホラー風味も感じさせる作品」をメインとした、
新進気鋭の米国のスタジオである。
主人公のシャロンは、貧困地域において周囲の仲間からいじめられている存在。
シングルマザーの母親からはネグレクト状態。
そんなシャロンは、ヒョンなことから地元を牛耳っているドラッグの売人ファンの世話を受けることになる。
シャロンの母親は実はジャンキーだった。
しかもドラッグの入手先がファンだった…
その辺の関係が3者の間に無妙な人間関係をもたらす。
一方でシャロンは、
ポスター写真で受けた貧相なイメージ通り、
単なる内気な性格以上に問題を抱えた性癖を持っていた。
そんなシャロンの性癖を受け入れ友情を深めた友人がケヴィンだった。
本作は、貧困社会で差別を受ける黒人の姿を描いた社会派ドラマであると同時に、
さらに差別を受ける状況にあるLGBTを描いた作品でもあったのである。
ドラッグのディーラーをメインにしながらも、
ギャングスタ系のクライムアクションの要素は希薄である。
むしろ、青年期のパートでシャロンとケヴィンが再会したシーンに、
ゲイ同士の友情と切なさを見事に描いたと思う。
場違いな印象かもしれないが、
個人的に連想してしまったのが、ウォン・カーウワィの作品。
黒人同士のブラザーなビジュアルのシーンに、
音楽の使い方を含めて、思わず切ないアジアンなテイストを感じた次第。
過激な底辺黒人社会の問題を描くわけでもなく、
ハードなゲイの関係を描写するでもなく、
A24らしい不条理ホラーの要素も感じられず。
実に丁寧な普遍的な人間ドラマの佳作だと思った。
しかし、これがアカデミー賞?
いやいや、今のアカデミー賞って、
こんな作品が王道なんでしょうね。