ユナイテッド・シネマにて鑑賞。

 

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

アレクサンダー・ペイン監督監督作品。

ポール・ジアマッティ主演、ドミニク・セッサ、ダバイン・ジョイ・ランドルフ出演。

 

 

時代は1970年。

全寮制の寄宿学校でクリスマス休暇を迎えるのだが、

事情があって実家に帰れない生徒5人が寮に残ることになる。

監督役として残るのが、

嫌われ者の教師ポール(ジアマッティ)。

5人の生徒の中の1人が再婚した母親から邪魔者扱いされているアンガス(セッサ)で、

残りの4人の生徒は途中から実家に帰ることができた。

残されたアンガスは、教師ポールと料理長のメアリー(ランドルフ)と3人で休暇を過ごすことになるのだが…

 

しみじみとしながらもコメディタッチの作品を予想していたのだが、

思っていたよりシリアスな作品。

ジャンルとしては精神系難病映画

 

シリアスでも難病映画でも良いのだが、

この作品の良さが分からなかった。

演出にも登場人物にも感情移入ができない

 

従って、冒頭から映画になかなか入り込めなかった。

 

アンガスは同級生とも小さなトラブルを起こす。

決して不良というわけではない。

 

 

教師のポールは生徒への厳格な評価や、

学校経営よりも理想的な教育を求めるあまり、

結果的に周囲から嫌われている…

と思いきやそれだけではなく、

斜視や体臭も嫌われる要素となっていた。

 

 

そんな2人には、同じ薬を服用するなどの、

共通する精神疾患を抱えていたのである。

また、ポールの体臭も他の病気によるものだった。

 

なるほど。

それまでの2人の理解できない行動の理由はそこにあったのか。

そんな病気が明らかになるあたり、

教師と生徒との関係を超えたバディムービーの趣も感じた。

 

 

精神疾患同士の絆から感じられるバディムービーの要素と言って思い出したのが、

日本のドキュメンタリー『だってしょうがないじゃない』。

かなりジャンルの違う作品ではあるが。

 

そんな2人を冷静に見つめていたのが、

料理長である黒人女性のメアリー。

しかし、メアリーは同じ学校の出身者であった自分の息子を、

ベトナム戦争で亡くしたという悲劇を抱えていたのである。

 

 

ストーリーは比較的淡々と進む。

その中で大きくドラマを感じさせたシーンの一つが、

学校の女性職員の自宅に招かれたホームパーティのシーンである。

 

 

ポールは家主の女性から軽くキスされて少々浮かれ気味となる。

色々な原因で女性とは縁のない人生を送ってきたポールである。

ところがその直後、

女性は他の男性とディープキッスをする場面を目にしてしまう。

 

一方メアリーは、

思い出の音楽を聴いているうちに感情が込み上げたのか、

内在させていたトラウマを爆発させてしまう。

 

ただ理解できなかったのが、アンガスのエピソードである。

家主の女性の計らいでアンガスは彼女の姪娘と一緒に過ごす。

すると、ちょっとした事で姪はアンガスにキスをする。

ええ?

唐突すぎないか?

そこから小さな恋の物語が発展するかと思いきや、

何と姪の登場はそこで終わる

 

今のシーンだけ詳しく書いてしまったが、

同様に理解できない演出のシーンが多々ありすぎた。

例を挙げきれないほどだ。

 

一方で、心に刺さったシーンもある。

アンガスが、母親と別れた実の父親と会うシーンである。

父親は施設に入っており、

アンガスをはるかに凌ぐ精神疾患を患っていたのである。

母親が別れた理由や、

アンガスへの遺伝要素の不安などを、

短い時間で暗示したシーンだった。

 

そのような休暇中に起きた様々な出来事は、

ポールの辞職やアンガスの退学と言った危機を招く。

その結果はここでは書かないが、

その終盤の展開でアンガスの今の両親がようやく姿を見せる。

 

その両親の描き方があまりにもステレオタイプで、

校長とのやりとりもありきたり過ぎてガッカリ。

 

うーん、ちょっとなあ。

 

最後に良かった点を追加。

アメリカ映画にしてはエンディングロールが短かったことと、

最後に「THE END」が出たこと。

ちょっとしたことなんだけど、

なんだか嬉しかった。

 

ただ映画は、4点かな。