ルポ 海外「臓器売買」の闇
読売新聞社会部取材班 (著)
新潮新書
重篤な臓器障害のために臓器移植を必要としている人が数多く存在している。
しかし、そんな移植のための臓器を提供するドナーの絶対数が足りないのが現状である。
そこで暗躍するのが臓器ブローカー。
海外の貧しい人から臓器を買い、
臓器移植を斡旋するブローカーの実態を描く。
図書館から借入。2024/4/17刊。
まず、本書は2つの特徴がある。
一つは、海外での臓器売買の実態を描いた点。
もう一つは、その様な実態を取材していく取材班の行動。
そう言った点で、実に読み応えのある一冊だった。
ただし、世界的な臓器売買の実態を広範囲で捉えたものではない。
メインとなる「事件」は、
キルギスで腎臓移植を受けて、
重篤な障害を受けた日本人女性のエピソード。
その事件を中心に本書は展開していく。
現在では様々な臓器移植が行われているが、
貧困のために自分の臓器を売り出しやすい腎臓移植がメインになっているのは、
本書のテーマに合致するところだろう。
そして、悪徳ブローカーの問題が挙げられるのだが、
なぜそのようなブローカーが発生するのか?
そこには臓器の需要と供給の関係、
すなわち国際的な貧富の差と言う問題がある。
まあ日本もいつまで「富」の側にいられるのか、
いささか心配であるが。
もう一つが、
日本国内でのドナーの圧倒的不足。
先進国でも、日本ほどドナーが少ない国は珍しいようである。
ちなみに、ブローカーを通じて海外で腎臓移植を受ける費用は、
だいたい2000万円ほどの様である。
それが高いか安いかは別として、
得体の知れないブローカーに金を渡して、
医療レベルも不確かな辺境の地で手術を受けるのは、
絶対に嫌だな。
言い換えれば、
クライアントたちはそこまで切羽詰まっているのだろう。
健康でよかった。