なぜ80年代映画は私たちを熱狂させたのか
伊藤 彰彦 (著)
講談社
今回は書店で購入。
「また映画本かあ」と思いつつ目次をめくると、
『桃尻娘』『ヨコハマBJブルース』!!
何?
これで購入決定。
さらに『家族ゲーム』『ユー★ガッタ★チャンス』『復活の日』『遠雷』ときたら…
単に80年代の日本映画の代表作を並べただけではない。
自分が好きな映画の匂いを感じさせる。
そして、内容はそんなヤバイ映画たちの評論ではない。
ぶっちゃけて言うと、
本書の主役は岡田裕。
80年代のヤバイ映画たちを世に送り出した、
映画プロデューサーだ。
9章からなる本書は、
それぞれテーマが映画のタイトルになっているのだが、
それぞれの章は経時的につながっている。
まさに映画青年だった頃の自分の映画体験が蘇る。
内容は、著者の映画論評集ではない。
プロデューサー岡田裕をはじめ、
それらの映画に関わった、
プロデューサーの山田耕大
監督の根岸吉太郎、滝田洋二郎
脚本家の丸山昇一、荒井晴彦
などへのインタビューが本書の中心となっている。
その中で、松田優作、内田裕也、伊丹十三、高倉健らのキャラクターも浮かび上がってくる。
80年代の日本映画とは一体何だったのか?
それを一言でまとめる文章力はない。
ただ言えるのは、
それをリアルタイムで経験した自分のイメージを、
本書が見事に追体験させてくれたことだ。
また一介の映画ファンには知り得ない映画制作の裏事情も奇譚なく描かれたのも貴重。
あの傑作の制作の裏にはそんな裏事情があったのか!
また、石原裕次郎と高倉健の人物のあまりにもの違いに、
驚くやら納得するやら。
当時の日本映画に興味のない人には届くかどうか分からないが、
取り上げた映画がマニアックすぎないあたりからして、
結構万人向けの映画本の傑作だと思う。